エコシステム

2026.05.01 21:13

極寒のバルト海沿岸から生まれる欧州で最も熱いスタートアップエコシステム

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今年1月、ビリニュスの冬の気温は摂氏マイナス22度に達した。

地元の人々はほとんど話題にしなかった。

代わりに彼らが長い夕食やさらに長い会議の席で語っていたのは、インフラだった。誰がそれを構築しているのか、どう資金が付くのか、そして人口250万人の国から生まれているものを、なぜ欧州の他地域は過小評価し続けるのか。

リトアニアは現在、ライセンス取得企業数でEU最大のフィンテック拠点となっている。稼働中の企業は248社に上り、欧州全域で約4000万人の顧客にサービスを提供している。そのエコシステムの内側で起きていることは、他の場所で展開するAIの誇大宣伝サイクルのようには見えない。そこにあるのは「速く広く」よりも「収益性と精度」を選んだ創業者たちの集団である。

このバルト海沿岸の首都を独自の存在にしているものは何か。

規制市場向けの構築で、リトアニアのフィンテックエコシステムが正しく捉えていること

彼らの多くが取り組む最も差し迫った課題はAML(マネーロンダリング対策)コンプライアンスである。規制当局は2024年だけで、金融機関に対し世界で46億ドルの執行措置を科した。内訳で最大を占めたのは取引監視の不備で、33億ドルに達する。Klarnaはスウェーデンで約4500万ドルを支払った。共通していたのは、銀行にコンプライアンスツールが欠けていたことではない。ツールの出来が十分でなく、誰もそれに間に合う形で気づけなかったことだ。

Amlyzeは、この問題を内側から捉えるチームによって設立された。「優先順位の欠如によって、市場リーダーになり得た機会を失ってきた」。AmlyzeのCEO兼共同創業者であるガブリエリウス・エリカス・ビルクシュティスはこう説明する。彼がフィンテック企業で過ごした時代、AMLは土台ではなく「後回し」として扱われていたという。同社はリトアニアの信用組合市場全体をカバーし、ルクセンブルク、シンガポール、ポーランド、キプロス、英国に顧客を持つ。

Amlyzeの創業チームは、リトアニア銀行の元規制当局者、元法執行機関職員、フィンテック運営者で構成されている。核となる洞察は、この3者はいずれも同じ問題を解こうとしてきたのに、まったく異なる言語で話してきたという点にある。「それぞれのステークホルダーが同じ部屋に集まっても、優先順位の異なる別々の言語で話している」とビルクシュティスは明確にした。「みな同じ戦いをしているのに」

規制された複雑性へと向き合うこの姿勢は、Amlyzeだけのものではない。2011年に設立され、現在は欧州全域で事業を展開する決済機関Payablも、製品哲学の全体を同じ前提に置いている。すなわち、コンプライアンスと決済インフラを扱う事業者が、数十もの断片的なシステムをつなぎ合わせて運用する必要はない、という考え方だ。

「システムやプロセスに伴う複雑さは、今日の決済における主要な課題のひとつである」と、同社CEOのウグネ・ブラツィエネは語る。「事業者にとって、多様な決済手段に加え、それに付随する規制やコンプライアンス要件を把握することは圧倒的になり得る」。同社の回答がPayabl.oneである。アクワイアリング、バンキング、イシュイング、エンベデッドファイナンシャルサービスを単一プラットフォームに統合する。

華やかさのない問題である。だが、まさにその点こそが、解く価値を生む。

退屈な市場ほど、最大のギャップが隠れている

InRentoは、見過ごされがちな別の領域で事業を展開している。欧州の銀行は2008年以降、中堅規模の不動産デベロッパー向け融資から概ね手を引き、より小さな案件規模に対しては戻ってこなかった。InRentoは戦略的な少数の市場でそのギャップを埋め、CEO兼創業者のグスタス・ゲルマナヴィチウスが「融資可能な顧客が、融資不可能なプロジェクトに乗っている状態」と呼ぶ対象に資金を供給する。「当社は銀行より高いが、はるかに速い」とゲルマナヴィチウスは説明する。「そしてプライベートデットファンドより安い」。銀行が4カ月かけても対応できない顧客の案件を、4週間未満でクローズする。

Nexosは、PDFのデッキだけを持ってピッチを行い、Index Ventures主導のシリーズAで3000万ユーロを調達した。「11月に最初の電話をし、12月にはもうタームシートにサインしていた」と、同社の最高商務責任者(CCO)であるユスタス・モルクーナスは振り返る。同社が構築しているのは、エンタープライズ向けAIガバナンスのインフラである。大組織の内部でAI採用を阻む本当のボトルネックは能力ではなく、可視性とコントロールだという見立てに賭けている。顧客にはCrowdStrikeがいる。Payhawkはデザインパートナーだ。

ここには、プロダクトマーケットフィットを探り当てるまで国内市場の中に隠れていられる余地がない。創業者は初日からグローバル志向であることを求められ、何を作っているのかを正しく理解していなければならない。大筋で正しく、残りは後で詰めればいいという余白がないからだ。「ほかのやり方はできない」とAmlyzeのビルクシュティスは言う。「ローカルに考えるには市場が小さすぎる」

その制約が、本当に解く価値のある問題が何かについて、極めて明晰な思考を生み出す。ほかのエコシステムが見落とし続けている教訓が、そこにある。

forbes.com 原文

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