経済・社会

2026.05.05 14:15

監視したつもりが監視される。各国が身構えるハッキングの世界

vadish - stock.adobe.com

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長引く米国、イスラエルによるイラン攻撃。その始まりとなったイラン最高指導者のハメネイ師暗殺では、イラン国内の監視カメラをハッキングしたことが、ターゲットの位置確認で大きな役割を果たしたとされる。逆にイランもイスラエルなどの防犯カメラをハッキングし、弾道ミサイル攻撃などでの目標確認に役立てているとされる。

米CNNは4月8日、ハッカーが中国国営のスーパーコンピューターから10ペタバイト以上の大量の機密データを盗んだと報じた。ハッカー集団によるとみられるSNSのアカウントは「航空宇宙工学、軍事研究、核融合シミュレーションなど多様な分野の研究が含まれている」と主張しているという。

新しい戦争に詳しい松村五郎元陸将によれば、人工知能(AI)の発達に伴い、純粋な軍事情報と一般情報を分離することが難しくなっている。松村氏は「過去は、軍の情報網は一般から分離されていた。一般情報で必要なものは、気象情報くらいだったからだ。当時は気象情報を取り込むルートからの侵入をどう防ぐかがほぼ唯一の課題だった」と語る。

ところが、AIが軍事利用される場合、一般の情報との分離は難しいという。「AIの構築そのものに軍事情報に限らないデータ更新を継続する必要がある上に、作戦を実施した際、非戦闘員の巻き添え被害がどれくらい出るのか、世論がどう反応するのかなどの情報も必要になるからだ」(松村氏)。当然、AIのデータセンターには軍事と一般の情報が同居することになりかねない。2023年8月には、米紙ワシントンポストが、中国軍のハッカーが、日本政府の防衛機密を扱うコンピューターシステムに不正侵入していたと報じたこともある。

CNNが伝えた事件はその後、大きな動きを見せていない。国家機関の犯行なのか、民間なのか、どこの国に属しているのかもわからない。米国の安全保障専門家は「このハッキングが事実でも驚くに値しない。米国のNSA(国家安全保障局)やイスラエルの(諜報・サイバーを担当する)8200部隊らは既に、これ以上のハッキングを行っていることに疑いはない」とも語る。

また、各メディアの報道によれば、日英伊で共同開発中の次期戦闘機の開発計画「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」を巡り、カナダが「オブザーバー国」として参加する準備を進めているという。この動きの背景には、カナダが最近進める「米国離れ」の思惑が働いている可能性がある。

松村氏は「ジェットエンジンも最近、製造各社とインターネットでつながっているケースが多い」と語る。エンジンに不具合が出た場合に、すぐに通報が届き、エンジン停止などの措置が遠隔操作できるようになっているという。このため、自衛隊を含む世界各国の軍隊がこぞって調達を急いでいるF35ステルス戦闘機などのエンジンにも、米側の思惑次第で停止させることが可能な「キルスイッチ」が備えられているという噂が絶えない。

大量のデータが簡単に敵対する陣営に渡ったり、敵対陣営から逆に操られたりしかねない時代になった今、日本も安閑とはしていられない。松村氏は「日本に設置されている監視カメラにも、中国製が多いと言われている」と語る。安価なため、商店街や個人所有の建物などで利用されているとみられる。中国製のドローン(無人機)も、やはり価格が安くて性能も悪くないため、あちこちで利用されている。イランやイスラエルの例をみてもわかるとおり、自分の監視カメラやドローンが、別の国の監視用ツールに利用される時代になりつつある。

自衛隊幹部は「これからの時代、マンションを売り出す時には監視カメラの製造元やドローン対策の有無などが重要な販売条件になるかもしれない」と半ば真顔で語った。

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文=牧野愛博

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