5人の女性チームで築いたTwo Wolvesと、ネイティブアメリカンの物語
ムーアは、5人の女性とともにTwo Wolvesのチームを築いたが、それは理念というより、彼女自身の経験に根ざしていた。「米カリフォルニア大学デービス校では、ワイン醸造学クラスの学生の50%が女性だ。でも、実際に醸造家になるのは14%にすぎない。アリソンがワインの貯蔵庫であるセラーで最初に言われた言葉の1つは、こうだった。『でも、あなたは樽を持ち上げられないでしょう』」とムーアは言う。「子どもがいる女性となると、雇うことなどできない、論外の存在と見なされる。『そのうち子どもを産む。いつも現場にいるわけではない。都合よく使い倒すことはできない』と思われるからだ」と彼女は続けた。
ムーアは、Two Wolvesを立ち上げるまで、女性のメンターに出会ったことがなかったという。「私の周りには女性がほとんどいなかった。常に男性に囲まれていた。彼らは素晴らしい人達だったけれど、女性が主導するプロジェクトに関わったのは、これが初めてだった。そしてすぐに、ここが自分の居場所だと感じた」と彼女は語る。
Two Wolvesでは、金曜日のランチが欠かせない。「そこには姉妹のようなつながりがある。本当に美しい時間だ。私はワイナリーに来て、自分のパートナーへの愚痴をこぼしたい。そして、その場にいる全員にも同じように話してほしい。我々は、そういう場所を必要としている」。
トムソンは、このプロジェクトが自分に何を与えてくれたのかをこう振り返る。「一時期、私はワイン業界を離れなければならないかもしれないと思っていた。幼い子どもがいて収穫期に働いている人を、私は見たことがなかった。でもアレシアは、それが可能だと私に示してくれた。彼女は家族のための余地を認めてくれる」。
Two Wolvesという「2匹の狼」を意味するワイナリーの名前は、ムーアが長年心に留めてきたネイティブアメリカンの物語に由来している。彼女は、その物語の意味を長い時間をかけて考えてきた者のように慎重に言葉を選びながら語る。「この話は、複数の部族に伝わるものだが、私はチェロキー族の伝説として知っていた」と語るムーアは、Two Wolvesの畑がある土地は、先住民チュマシュ族の土地だと補足する。
彼女によれば、この物語に登場する祖母は、人の内側には2匹の狼が住み、互いに争い合っていると孫娘に教える。1匹は強欲・羨望・怒り・嫉妬・利己心・恐れの象徴で、もう1匹は好奇心・思いやり・寛大さ・愛を表すという。孫娘が「どちらの狼が勝つの?」と尋ねると、祖母は「あなたが餌を与えたほうだ」と答える。
「これはバランスが大事だという話だ。我々は両方の狼を内に抱えている。だが、今日、どちらに餌を与えているのか。日によって、良い日もあれば、そうでない日もある」とムーアは語る。彼女はトムソンを見てにっこりと笑い、「彼女は私の相棒の狼だ。私は彼女をダークサイドに引き込もうとしている」と話した。
学ぶことを目指したムーアが、10年の歩みの中で得たもの
ムーアは、最初から後世に残るブランドを築こうとしていたわけではない。彼女が目指したのは、学ぶことだった。サンタバーバラ郡にある有機認証を受けた25エーカーの畑で育てたブドウを使い、5人の女性チームが少量生産するワインは、10年にわたる真摯で困難で、喜びに満ちた取り組みの副産物として生まれたものだ。
ブドウ栽培では、毎年冬に伸びた枝を選別し、不要な枝を切り落として翌年の収穫量と品質を調整する。
サンタ・イネス・バレーは、人口当たりで見ると、世界のワイン産地の中でも女性醸造家の比率が最も高い地域だ。ムーアが冬の畑で、剪定鋏を手にひざまずき始めた頃には、まだそのことを知らなかった。だが今は知っている。それを知るだけの資格を、彼女は自らの手で勝ち取ったのだ。


