米ストラテジー(旧マイクロストラテジー)は、ビジネス分析ソフトを手がける米上場企業から、世界最大のビットコイン保有企業へと変貌を遂げた。2020年以降、CEOのマイケル・セイラーは資金調達とビットコインの買い増しを繰り返し、4月には保有量で世界最大の現物ビットコインETF「IBIT」を運用するブラックロックさえ上回った。
買い増しの主軸となっている資金調達手段が、利回り11.5%の永久優先株「STRC」(通称Stretch[ストレッチ])だ。米国で優先株は、退職後の資金運用先として個人投資家やファイナンシャルアドバイザーに広く選好される、伝統的なインカム商品である。
しかしSTRCの配当原資は、ビットコインの売却益ではなく、新規の株式発行で集めた現金にある。優先株保有者には、同社のビットコイン保有分に対する直接の請求権もない。新規投資家の資金で既存投資家への配当を賄う構造には、米国では完全に合法ながら、過去の大型投資詐欺と重ねて見る向きも出ている。
ビットコイン保有量でブラックロックを抜き、世界最大の機関投資家に
ストラテジーは2026年4月下旬、世界最大の現物ビットコイン上場投資信託(ETF)「IBIT」を運用する資産運用大手ブラックロックを抜いて、世界で最も多くのビットコインを保有する機関投資家となった。この節目は、同社のさらなる大量購入に続くものだ。
米証券取引委員会(SEC)への直近の提出書類によれば、ストラテジーは4月13日から19日にかけて25億4000万ドル(約4000億円。1ドル=156円換算)相当のビットコインを購入し、これは2024年11月以降で最大の取得となった。今回の購入によって、同社の総保有量は81万5061BTCに達している。これは発行上限が2100万BTCに固定されているビットコイン全体の約3.88%にあたり、現在の価格で約650億ドル(約10.1兆円)に相当する。これを上回る保有者は、15年前に姿を消した暗号資産の謎多き創設者サトシ・ナカモトだけだと見られている。
高利回りの永久優先株Stretchが、ビットコイン買い増しの主な資金源
ストラテジーが最近のビットコイン買い増しに充てている資金は、同社が普通株や転換社債を大量発行して得たものではない。主な資金源は、トレーダーが親しみを込めて「Stretch」と呼ぶ高利回りの永久優先株だ。同社はこの優先株を「STRC」のティッカーシンボルで発行している。ストラテジー会長のセイラーは、Stretchを自身のビットコイン帝国の次のフェーズに欠かせない土台に位置づけている。
ストラテジーは2020年から2024年にかけて、主に転換社債の売却と普通株の発行によって、ビットコインの大量購入資金を賄ってきた。この手法は、通用していた当時は巧みな金融工学の妙技だった。ビットコイン価格が上昇し、投資家がストラテジー株を同社の保有ビットコイン価値を大きく上回る水準まで買い進める中、セイラーは株式に転換できる社債を発行し続け、大きな利益を見込むヘッジファンドなどの投資家に普通株を売り続けることができた。同社株は時期によって、バランスシート上のビットコイン価値の2〜3倍で取引されることもあった。
しかし、2025年初めにビットコインの価格が下落し始めると、このモデルは行き詰まり始めた。転換社債の買い手は下落リスクへの備えと利回りを求めるようになり、普通株主は大幅な希薄化に直面した。株価に上乗せされていたプレミアムも消え始めた。それでもセイラーは、多くのビットコインを求めていた。
そのためストラテジーは2025年、資金調達手段を広げ、一連の優先株の発行に踏み切った。セイラーはいつもの派手な語り口で、これらを「デジタルクレジット」として売り出し、安定した収益を得られる点を強調した。
そしてSTRCは、ほどなく主力商品となった。2025年7月に90ドルで発行され、当初の配当利回りが9%に設定されていたこの永久優先株は、月次配当を支払いながら額面100ドルで取引されるよう設計されていた。この仕組みには、価格を自律的に調整する狙いがある。株価が額面を大きく下回れば、ストラテジーは配当を引き上げて買い手を呼び戻せる。一方、株価が100ドルを上回れば、同社は市場価格で随時売り出すATMプログラムを通じて優先株を追加発行し、供給を増やして価格の上昇を抑えられる。
セイラーの巧みさは、STRCがビットコインを安全に買う手段だと投資家に信じ込ませた点にあった。この優先株は、実際のところ、ストラテジーが調達資金で買い増したビットコインに対する直接的な請求権を持つものではない。それでもSTRCの現在の利回りは11.5%に達し、価格は99.59ドルとなっている。この優先株が95ドルを下回ったのは、過去9カ月でわずか3回のみだ。



