暗号資産

2026.05.07 17:00

米ストラテジーの巨額ビットコイン買い増し、その手法とは? 合法ながら過去の投資詐欺と重ねる向きも

2026年4月27日、「ビットコイン・カンファレンス2026」に登壇したマイケル・セイラー(Photo by Tayfun Coskun/Anadolu via Getty Images)

Stretchの支持層が広がる一方、年1872億円超の負担と急落リスクも高まる

セイラーが進める最新のバランスシート拡大計画には、富裕層顧客向けのインカム商品を探すファイナンシャルアドバイザーという新たな支持層も加わっている。テキサス州オースティンに拠点を置くOrigin Wealth Advisersの創業者モーゲン・ロシャールは「当社の顧客の80%はSTRCとストラテジーの普通株に投資している。実際には、普通株よりもSTRCをかなり多く使っている」と語る。ロシャールは、ビットコイン強気派として長く知られ、ビットコイン保有会社Striveの取締役を務める人物の妻でもある。

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「債券ポートフォリオを持っていても、利回りが4%程度であれば大きな収入は得られない。短期債からのインカムだけで生活しようとすれば、退職に必要な元本はかなり大きくなる。だから当社は、こうした商品を、利回りを高める手段として顧客に活用してもらっている」とロシャールは説明した。

機関投資家からDATまで、Stretchの保有は個人投資家を超えて広がる

投資信託やETFの運用会社もSTRCを買っている。Stretchは現在、ブラックロックの「iシェアーズ優先株式&インカム証券ETF」における第3位の保有銘柄となっており、組み入れ額は約3億4400万ドル(約537億円)にのぼる。VanEck、フィデリティ、アメリカン・ファンズも、この新たな優先株の大口保有者に名を連ねている。2026年2月には、スイスの資産運用会社21シェアーズが、ユーロネクスト・アムステルダムに「Strategy Yield ETP」を上場させ、欧州の投資家がStretchの変動利回りに上場商品を通じて投資できるようにした。その1カ月後には、StriveとETF発行会社のタトル・キャピタル・マネジメントが、STRCを保有するファンドの申請を行った。

「デジタル資産トレジャリー(DAT)」と呼ばれる、ストラテジーを模倣した数百社の企業もStretchを購入している。これらの企業は、最近のビットコイン購入でリターンが低迷しているため、Stretchで利回りを押し上げようとしている可能性が高い。

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中南米最大のDATであるOranjeBTCは最近、2億9200万ドル(約456億円)規模のビットコイン保有資産のうち1000万ドル(約16億円)をStretchに投資した。ビベック・ラマスワミのStriveは、自社の保有資産から5000万ドル(約78億円)をSTRCに投じ、SATAという類似の優先株を作った。SATAは13%前後の利回りを提供しており、時価総額は約11億ドル(約1716億円)に達している。市場にはStretchに連動するステーブルコインまで登場しており、その時価総額は1億5000万ドル(約234億円)に達している。

「人々はStretchを見て、何かクレイジーでリスクの高いビットコイン関連商品だと受け止める。しかし我々は、大きなバランスシートに支えられ、運転資金の需要に合う流動性を備えた、非常に持続性の高い配当を生む商品だと見ている。しかも、マネーマーケットファンドで得られたはずの利回りの4倍を稼いでいる」と、OranjeBTCのビットコイン戦略・リサーチ責任者、サム・キャラハンは語った。

現状の金利が比較的低く、新たなFRB議長の下で利下げの可能性も浮上する中、セイラーがビットコインという「魔法の粉」を、ファイナンシャルアドバイザーやその個人顧客にとって適合性原則(suitability rule)があてはまるかのように見える、安定した高利回り商品に仕立て上げる手腕は、止まりそうにない。

年間負担がソフトウェア事業の売上を超え、額面割れの可能性も浮上

総じて、ストラテジーは年間12億ドル(約1872億円)超の利払いと優先株配当の支払い義務を抱えており、その負担は大きく、しかも膨らみ続けている。同社の唯一の実業であるソフトウェア事業の年間売上高は、わずか4億7700万ドル(約744億円)にすぎない。同社は2025年、ビットコインで50億ドル(約7800億円)超の損失を計上した。

それでも、同社のビットコイン保有額は600億ドル(約9.4兆円)を超えているため、ストラテジーの債務保有者が損失を被るような事態になるのは、暗号資産市場で壊滅的な崩壊が起きた場合に限られる。一方、ストラテジーのビットコイン保有分に直接的な請求権を持たない優先株保有者には、現実的なリスクがある。特に、セイラーがいつか11.5%の配当を削減せざるを得なくなれば、Stretchはいつの日か「ブレーク・ザ・バック」(マネーマーケットファンドが額面1ドルを割る現象)を起こし、100ドルの額面から急落する可能性がある。現時点では、その帰趨は、過去12カ月で50%超下落して苦境にあるストラテジーの普通株に、買い手を継続的に呼び込めるかどうかに大きく左右されるとみられる。

しかしセイラーは意に介さず、Stretchを個人投資家にとってより魅力的な商品にする方針を最近発表した。ストラテジーは4月17日、STRCの配当支払いを月1回から、給与のように月2回へ変更することを提案した。この提案が6月8日の年次総会で承認されれば、STRCは市場で唯一、月2回配当を支払う優先株となる。新たな月2回のStretch配当は、6月30日時点の登録保有者に支払われ、初回の支払いは7月15日に予定されている。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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