暗号資産

2026.05.07 17:00

米ストラテジーの巨額ビットコイン買い増し、その手法とは? 合法ながら過去の投資詐欺と重ねる向きも

2026年4月27日、「ビットコイン・カンファレンス2026」に登壇したマイケル・セイラー(Photo by Tayfun Coskun/Anadolu via Getty Images)

STRCが時価総額約1.3兆円で世界最大の優先株となり、個人投資家が殺到

セイラーは、Stretchを飛躍的な転換点と呼んでおり、この優先株が安定性と流動性を維持できれば、ストラテジーがこれまで使ってきたどの資金調達手段よりも、はるかに大きな資本を呼び込める可能性があると主張している。「Stretchが実際に額面に到達し、低いボラティリティで推移すれば、理論上は1000億ドル(約15.6兆円)分を売却できる」と、彼はアナリストに語った。

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新規株式公開(IPO)時点で25億ドル(約3900億円)だったSTRCの時価総額は現在、85億ドル(約1.3兆円)にまで膨らみ、ストラテジーが発行する他の3種類の優先証券の合計価値を上回っている。BitcoinTreasuries.netによれば、STRCの取引量は現在、すでに大きな規模を持つ普通株MSTRの日次取引量の約20%に相当する。

また、4月13日だけで、STRCの取引額は11億ドル(約1716億円)を超えた。これは、日次取引量が2000万ドル(約32億円)を超えることがまれなJPモルガンやウェルズ・ファーゴなどの優先証券の平均日次取引量を大きく上回る規模だ。実際、STRCは時価総額ベースで世界最大の優先株となっており、時価総額47億ドル(約7332億円)のウェルズ・ファーゴ優先株シリーズLのほぼ2倍、時価総額37億ドル(約5772億円)のバンク・オブ・アメリカ非累積永久転換優先株シリーズLを大きく上回る規模に達している。

ベンチマーク・ストーンXのシニア株式調査アナリスト、マーク・パーマーによれば、STRCはすでにストラテジーの資金調達戦略の中核になっている。

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個人投資家がStretchに殺到しているのも不思議ではない。この優先株はジャンク債を上回る高い利回りを提供しているうえ、セイラーはSTRCの配当が「資本の返還」として扱われるため、課税を先延ばしできる仕組みだと売り込んでいるからだ。

ストラテジー社長兼CEOのフォン・ルは、ポッドキャスト番組Coin Storiesの最近のエピソードで、「これは非常にシンプルな商品だ。マネーマーケット(短期金融市場)で利息を受け取るようなものだと考えればいい。私は毎月支払いを受けられる点が気に入っている。ほとんど給与のように見えるからだ」と語っていた。

配当原資は新規投資家の資金で賄われ、ビットコイン買い増し計画は今後も進む

マネーマーケットファンドの現在の利回りは4%未満だが、通常は米財務省短期証券などの信用力が高くリスクの低い資産によって裏付けられている。一方、セイラーが売り込む人気の優先株には満期も議決権もない。ストラテジーが破産した場合、この優先株の保有者が同社資産から弁済を受ける順位は、同社が抱える83億ドル(約1.3兆円)の債務の保有者よりも後になる。

一方、ビットコイン価格が過去1年で16%下落する中、ストラテジーは、Stretch保有者に毎月支払っている約8500万ドル(約133億円)の現金配当を、ビットコインを売却せずにどう賄っているのかという疑問が浮かぶ。

ストラテジー社長兼CEOのルによれば、同社は利回りを通常、市場で株式を発行することで生み出しているという。「裏側で我々がやっているのは、市場で最も流動性の高い普通株であるMSTRの発行だ。株式を発行して調達した資金を、基本的に配当の支払いに充てている」とルは説明した。

実際、ストラテジーが最も力を入れているのは、ビットコインの購入以外では、毎週のように証券を発行することだ。SECへの提出書類によると、同社は4月1日から19日にかけて、3300万株近くのStretchの優先株を発行し、33億ドル(約5148億円)近くを調達した。また、同じ期間に270万株超の普通株も発行し、4億3800万ドル(約683億円)を得ていた。

投資詐欺のように聞こえるかもしれないが、米国では完全に合法

既存投資家へのリターンを、別の投資家から集めた資金で支払うと聞くと、ポンジ・スキーム(投資詐欺)のように聞こえるかもしれない。しかし、この仕組みは米国では完全に合法で、透明性もあることで知られている。ただし、そのあまりに大胆で単純な仕組みには、故バーナード・マドフも嫉妬したかもしれない。マドフは、2008年に発覚した史上最大の投資詐欺事件で有罪判決を受け、服役中の2021年に獄中死した(編注:ネットフリックスでは『バーナード・マドフ: ウォール街の詐欺師』が配信されている)。

Stretchの優先株は新たな資金をもたらす一方、通常の債務とは異なり、流動性リスクは小さい。なぜならセイラーが、必要な場合には配当を減らせるからだ。また、Stretchやその他の優先株の発行で調達した資金は、ストラテジーが普通株や転換社債で同様の購入を賄う場合ほどには普通株式数を増やさずに、追加のビットコイン購入へ充てることができる。これは、セイラーが生み出したもう1つの注目指標である「BTCイールド」──希薄化後1株あたりのビットコイン保有量に関するセイラー独自の指標──を下支えする要因にもなっており、彼は現在この数値を9.5%とアピールしている。

ビットコイン追加購入のため、2027年までに約13.1兆円超の調達を目指す

ストラテジーの最近相次ぐ優先株の発行は、継続的な普通株の発行とともに、2027年までにビットコインの追加購入資金として840億ドル(約13.1兆円)を調達する「42/42」と呼ばれる計画の一部をなしている。同社にはなお82億ドル(約1.3兆円)の転換社債残高があるが、今後数年でバランスシートの重心を永久優先株へ大きく移すことを目指している。セイラーの熱心な支持者にとって、この計画は完璧に見える。

ベンチマークのパーマーは「永久優先株には満期がない。財務制限条項もなく、ビットコイン価格に連動する発動条件もない。そのため、転換社債とは異なり、実質的には恒久的な資本に等しい」と語る。「ビットコインのように価格変動の大きいコモディティの取得に注力する企業にとって、これ以上適した手段は思いつかない」と彼は続けた。

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翻訳=上田裕資

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