経営・戦略

2026.05.01 15:02

混乱期こそ人を採れ──危機下の採用が組織を強くする理由

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Maayan Aviv氏はAmerican Friends of NATALのCEO。15年以上の経験を持つ非営利組織のリーダーであり、メンタルヘルス治療の分野でインパクトの創出を牽引している。

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いま世界の組織を見渡すと、「成長」という言葉はしばしば小声で語られる。口にするのは、リスクを取れる人か、あるいは無謀な人だけ、という空気すらある。危機が起きると、それが経済的なものでも、地政学的なものでも、業界特有のものでも、リーダーの自然な反応は立ち止まり、ときに後退することだ。採用枠を凍結し、痛みを伴うほど支出を絞る。規模の拡大より、生き残りを優先する。

しかし、危機や緊急対応の環境のなかで何年も指揮を執ってきた結果、私は気づいた。この本能は、生物学的には理にかなっていても、組織にとっては致命的になりうる。

それを裏づけるデータもある。Bain & Companyによる3900社の重要な研究は、いまなお示唆に富む。2007〜2017年の期間で、景気後退局面において勝者は年平均成長率(CAGR)17%で成長した一方、敗者は0%で停滞した。つまり困難な局面では、実行できるだけでなく、進化もできるチームがリーダーには必要だ。「安全宣言」を待ってから成長に着手するのでは、レジリエンスの文化を築く機会の窓をすでに逃しているかもしれない。

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危機の最中であっても、なぜ、そしてどうやってリーダーが「身内の輪」を広げるべきなのか。以下にその理由と方法を示したい。

肩書や経歴だけでなく、「哲学」で採用する

安定した時期には、スキルセットを基準に採用する。危機の時期に必要なのは、私が学んだ限りでは「魂」で採ることだ。チームを見渡すと、とりわけ最も混乱した局面で加わったメンバーについては、履歴書やLinkedInプロフィール以上のものを見てきた。内なるコンパスを見極めようとしてきたのである。

危機のさなかでは、個人と仕事の境界線は曖昧になる。チームメンバーは不確実性や不安に向き合う一人の人間であり、その個人的な哲学がミッションと一致していることが不可欠だ。

緊急時に取り組む仕事と、本人の中核的価値観が相反しているなら、燃え尽きるだけでは終わらない。壊れてしまう可能性がある。危機における真の成長は、10年の経験はなくとも、適応力が突出し、年齢に反して「プロ」のマインドセットを備えた、若く意欲的で、しばしばエントリーレベルの人材を見つけ出すことから生まれる。

「育成の義務」:マネジメントからメンタリングへ

厳しい時期にチームを拡大するには、私が「育成の義務(the nurture mandate)」と呼ぶものへのシフトが必要だ。スタッフ、とりわけ若手が大丈夫かを確認する。食事を取ったか、必要な休憩を取ったかを尋ねる。長い道のりの一部には、自分自身をケアすることも含まれるのだと理解を促す。

心理的なセーフティネットを用意すれば、彼らはコンフォートゾーンを超え、自分でもできるとは思っていなかった成果を出せるようになる。Catalystは、業界横断で約900人の従業員を対象に、共感的なリーダーシップの影響を調査した。その結果、「共感性の高いシニアリーダーのもとにいる従業員は、共感性の低いシニアリーダーのもとにいる従業員と比較して、より高いレベルの創造性(61%)とエンゲージメント(76%)を示した(後者はそれぞれ13%、32%)」と報告している。

徹底した期待値マネジメント

成長フェーズにおけるチームの士気を最も削ぐのは、「動くゴール症候群」だと私は感じている。危機のなかでは、月曜の目標が水曜には無意味になっていることも珍しくない。

新しい人材を迎え入れるなら、社内コミュニケーションに執着するほどでなければならない。伝えすぎることはない。リーダーは、クライアント、寄付者、国際的パートナー、社内チーム、そして特に新規採用者に至るまで、あらゆるレベルで期待値を管理する必要がある。「成功」の定義は、昨日と今日で違って見えるかもしれないことを理解してもらわなければならない。

この透明性は、稀有な種類の忠誠心を生む。混乱を正直に語りながらも方向性はぶれないリーダーを新入社員が目にすると、より良い問いを立てるようになり、組織の成功を自分の成功として捉えることが多い。そして恐れに基づいて行動しない。

共感とブーメラン効果

多くのリーダーは、ストレス下の環境に新しい個性を加えれば摩擦が起きるのではないかと懸念し、採用に二の足を踏む。ここで有効な戦略の1つは、過去の従業員という人材プールに目を向けることかもしれない。

危機における最良の成長の一部は、すでに組織のDNAを知っている人々から生まれる。最良の時も最悪の時も見てきた人に声をかけ直すことは、危機において高価な資源である「時間」を節約する。1カ月のオンボーディングは不要だ。必要なのはミッションとノートPCだけである。こうした馴染みの顔ぶれに、若い新しい視点を統合すれば、企業の歴史に軸足を置きつつ、不確実性に向けて活力を得る、世代横断の力が生まれる。

霧のなかで「新しい視点」を探す

シニアリーダーシップを襲う特有の「危機の盲目」がある。生き残るための「どうやって(how)」に追われすぎて、ビジョンの「なぜ(why)」を見失ってしまうのだ。だからこそ、新しい人材でチームを増強することは、戦略上の妙手になりうる。

新規採用者は異なる視点をもたらす。彼らは危機の過去6カ月に傷ついていない。しばしば機会を見出し、否定的になりにくく、より楽観的で、前向きな空気を運んでくる。それは、疲弊で満たされかねない集団にとって、まさに必要な楽観の一服である。

結論

人こそが組織の心臓であり魂だという信念で導けば、他のリーダーが羨むような信頼を築ける。

嵐が過ぎるのを待ってから船を造るのでは、競合がすでに何マイルも沖へ出たあとで、岸に立ち尽くすことになりかねない。心で採用せよ。共感で導け。そして忘れてはならない。暗闘のなかであなたと共に築いてくれた人々こそ、ようやく日が昇るとき、隣にいてほしい人たちなのである。

forbes.com 原文

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