ヘビクイワシは、非常に危険で致命的な捕食戦略を駆使する、動物界屈指の存在だ。とはいえ、その奇妙な姿を見ただけでは、そんなふうには思えないだろう。ヘビクイワシは大半の猛禽類とは異なり、獲物を前にした時に、鉤爪を使うこともないし、くちばしで攻撃することもない。代わりに、驚くほど強力かつ正確な蹴りを入れて、獲物を仕留めるのだ。
実際にその様子を目にしない限り、にわかには信じられないだろう。奇妙な見た目のヘビクイワシが草原を歩き回り、見つけたヘビの頭部を素早い動きで踏みつけて仕留めるなんて、あり得ないと思うかもしれない。しかし、ヘビクイワシのこうした行動については、ある研究チームが2016年に『Current Biology』で論文を発表し、詳細を科学的に解明した。ヘビクイワシが繰り出す蹴りのスピード、威力、神経学的に高度なその仕組みを、史上初めて定量化したのだ。
では、ヘビクイワシの他に例を見ない狩猟戦略について明らかになったことを解説していこう──彼らの進化につながった独特の環境的圧力から、驚異の破壊力まで。
脚で狩りをするヘビクイワシ
ヘビクイワシ(学名:Sagittarius serpentarius)は、アフリカ・サハラ砂漠以南の開けた草原やサバンナ一帯に生息している。そうした地域で暮らす動物たちにとっての主な問題は、身を隠す場所がないことだ。狩りがしやすい深い森や林がないし、待ち伏せに適した止まり木もない。
獲物になる動物たちは、背丈の高い草のあいだを移動するが、そのさなかに時々、捕食者から見つかることになる。そうした開けた土地で生きる動物たちは、常に警戒しており、不意に襲われることはめったにない。
一方の猛禽類は、上空を飛びながら獲物を見つけ、急降下して捕まえるという標準的な狩りの手法が、あまり役に立たない。そこでヘビクイワシは、異なる手法を取り入れている。地上を歩いて狩りをするのだ。
ヘビクイワシは、草原をゆっくりと慎重な足取りで歩き、周囲の草などをわざわざ揺らして、げっ歯類やトカゲ、ヘビなどの獲物をおびき出す。捕食者も獲物も隠れることができない、開けた場所での遭遇は、しばしば正面から出くわすかたちになる。
例えば、ヘビはいったん見つかったら最後、容易に身を隠せない。だからといって、ヘビクイワシが不用意に近づくこともできない。ヘビは動きが素早く、身構えるし、毒を持っていることもある。従って、少しずつ近寄っていって、くちばしや鉤爪でヘビをつかむのは危険だ。
そこでヘビクイワシは、距離を保った状態で、獲物に対峙する。脚がとても長いので、ヘビが防御できる範囲の少し外側から攻撃ができる。離れていることで、自分の身を守ることもできる。ヘビクイワシは、ヘビをつかもうとしたりはせず、ヘビの頭めがけて強力な蹴りを繰り出す。頭は、敵を無力化する上で格好のターゲットだ。



