8組のアーティストが「日本の文化資源」再発見して生まれた表現とは

「ART X JAPAN CONTEXT」の最終作品発表・展示会にて

「ART X JAPAN CONTEXT」の最終作品発表・展示会にて

旅先で「かっこいい岩」を見つけると、スマホを取り出す人がいる。写真を撮るのではない。3Dスキャンだ。テクノロジスト/ビジュアルアーティストの松山周平は、世界各地で出会った岩の形状データを、子どもが河原で石ころを拾い集めるようにこつこつ溜め込んできた。本当は岩をそのまま持ち帰りたいのだけれど、さすがに税関が許してくれない。

だからスキャンする。データにして持ち帰る。でもデータのままだと、岩はどうしても岩にならなかった。この小さな挫折が、経済産業省が初めて本格的に仕掛けたアート支援プログラムの、思いがけない結実につながっていく。

世界の1%から始まった「掛け算」

2026年3月、東京ミッドタウン。アトリウムとガレリアの吹き抜けに、8組のアーティスト・チームによる作品が点在していた。クリエイター・エンタメスタートアップ創出プログラム「ART X JAPAN CONTEXT(アート バイ)」の最終作品発表・展示会である。

主催は経済産業省。アブストラクトエンジンが事務局を担い、統括プロデューサーにはパノラマティクス主宰の齋藤精一が就いた。2025年5月から約10カ月にわたり、日本各地の企業や産業が持つ「文化的資源」とアーティストをマッチング支援、制作費の補助、メンタリングなどを続けて育ててきたプログラムだ。その最後に、海外市場を見据えた発表の場を用意していた。

世界のアート市場における日本のシェアは約1%。その数字を前に、3月8日の展示・発表会で、経産省文化創造産業課の藤井亮介調査官は、企業とアーティストの「共創」から新たな価値を生み市場を拡大することを目標に掲げた。

齋藤の見立ては、もう少し踏み込んでいる。海外から日本のものづくりやクラフト、アーティストへの評価はすこぶる高い。しかし当の日本人がその価値をよくわかっていない。この「クリエイティブ・コンフィデンス」の空洞が、アートを産業として外に押し出せない根っこにあるのだ、と。

そこで選ばれた方法が、「掛け算」だった。有松鳴海絞り、竹工芸、半導体設計、音響技術といった日本の文化的資源とアーティストのマッチング8組が採択され、それぞれが手探りの対話を重ねながら制作を進めた。

プログラムには6人のメンターがついたほか、期間中には小山登美夫(小山登美夫ギャラリー)、片岡真実(森美術館館長)、小川秀明(アルスエレクトロニカ)らを迎えた全8回のレクチャーも設けた。

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文=青山鼓

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