些細な指摘の累積コスト
たった1つの言い回しだけで信頼が壊れることはまれだ。だが、些細な指摘が積み重なると、仕事上の関係の雰囲気は変わっていく。「前回のメールの通り」「すでに述べた通り」「議論した通り」「以下をご覧ください」といった表現は不用意に使えばいずれも同様のリスクを伴う。そうした表現は「助けられている」のではなく「訂正されている」という感覚を相手に抱かせてしまう。
やがてそうした言葉を言われた側は慎重になる。質問をすることをためらい、メッセージを何度も確認する。仕事そのものに集中するより不注意に見えないようにすることにエネルギーを費やしてしまう。そうしたコストは決して小さいものではない。コミュニケーションは不確実性を減らすべきもので、自己防衛の姿勢を強めるものであってはならない。
リーダーはこの点に注意を払うべきだ。なぜなら、言葉のトーンは組織内で広がるからだ。上位の立場の人がぶっきらぼう、あるいは苛立ったような言葉を使えば、部下が真似ることがよくある。最初は1人のメールの書き方だったものが、やがてグループ全体のコミュニケーションの雰囲気へと変わってしまう。
代わりに使うべき表現
もっと良い代替表現は全てを過度に柔らかくすることではない。人は情報を見落とし、同じ質問が繰り返されることもある。締め切りは重要であり、明確さは依然として必要だ。
鍵は指摘とそこに含まれる評価を区別することにある。「前回のメールの通り」と書く代わりに、「分かりやすくするために、関連する詳細を改めて共有します」と書いてみよう。急ぎの場合は「迅速に進められるよう、これをここに再掲載します」と伝えてみよう。本当に混乱している場合は「先ほどの説明が十分でなかったかもしれないため、重要なポイントを改めて伝えます」と書くといい。
これらの代替表現は、情報が共有されなかったかのようにするものではない。言葉の刺々しさを和らげるだけだ。仕事が停滞した理由について責任のなすり合いをするのではなく、仕事を前進させることに焦点を当て続ける。より強いトーンが正当化される場面もある。相手が明確な情報を繰り返し無視している場合は、率直な話し合いが必要になるかもしれない。だがそのような場合でも苛立ちをメールで伝えるのは最善の策ではないことが多い。辛辣な言葉では事態を悪化させるばかりのようなことを短い電話1つで解決できることがよくある。
リーダーシップの教訓
「前回のメールの通り」という表現に隠された意味はメールにあるわけではない。
職場での言葉はいとも簡単に不満を伝えるものになってしまうということだ。人は自分でもはっきり認めたくない感情のメッセージを隠すためにビジネスライクな言い回しを使うことが多い。
優れたリーダーはこの傾向を自覚する。強い調子で返信する前に、「自分は単に明確にしようとしているのか、それとも相手に『分かっているべきだった』と感じさせようとしているのか」と自問する。この問いがメッセージの内容を変える。
職場における最も優れたコミュニケーションは、最も柔らかいものでもなければ洗練されたものでもない。余計なダメージを最小限に抑えつつ、最も明確なものだ。「前回のメールの通り」という表現は効率的かもしれないが、相手に不快感を与えることが多い。そして大半の職場においては苛立ちをまとわない方がはるかに明確に伝わる。


