2005年に学術誌『Journal of Theoretical Biology』に発表された重要な研究において、応用数学者のマイケル・キュッケンとアラン・ニューウェルは、指紋のパターンが、皮膚の基底細胞層における座屈(構造物が一定以上の荷重を受けると急激に変形が進むこと)の不安定性から生じると提唱した。興味深いことに、座屈は、薄い金属板が圧縮力を受けて皺(しわ)が寄るのと同じ種類の物理現象に分類される。
彼らの主な洞察は、指紋の隆線が、指先に作用する最大圧縮応力の方向に対して、垂直に走っているというものだった。掌側パッドの形状(その盛り上がりや、対称性の度合い)により、結果として現れるパターンが、渦状紋、蹄状紋、弓状紋のいずれになるかが決まるという。具体的にいうと、対称性が高く、ドーム状に大きく盛り上がったパッドは渦状紋を生み出しやすく、より平坦または対称性の低いパッドは蹄状紋、小さい形状のパッドは、最も単純なパターンである弓状紋を形成するという。
言い換えれば、最終的に形成される特定の指紋パターンは、必ずしも設計図のようにDNAに直接コード化されていたものではないことになる。それは、胎児発達の特定の時期に、指先の形状に基づいて、成長の過程で応力を受ける組織の物理的力学から生じているのだ。
そう考えると、どこか厳かな気持ちにさせられる。我々を唯一無二の存在にしている要素の一部は、生物学と物理学の境界で作用する力によるものであり、それは、我々が全く記憶していない人生の一時期の出来事なのだ。
なぜ指紋が進化したのか
最も直感的な仮説は、「指紋の隆線は、物をつかむのに役立つ」というものだが、最近の説明によると、この仮説は同時に最も精巧なメカニズムを伴う。指紋がどのようにして把持力を高めるのかは、長年よく理解されていなかったが、研究者が詳しく調べたところ、その答えは実に見事な仕組みだった。
2020年に学術誌『Proceedings of the National Academy of Sciences』に発表された研究は、高度な画像化技術を用いて、指先とガラスの境界面で何が起きているかを観察することで、この謎に直接挑んだ。得られた結果は、「これらの隆線が摩擦を増大させる」という単純な予想を覆すものだった。指紋の隆線は、二重の水分調節システムの一部として機能しているとみられるのだ。


