これまで日本人が慣れ親しんできた中華料理とはまったく異なる、本場の味を提供する「ガチ中華」の店が東京を中心に日本各地で急増している。
ガチ中華とは、いったいどんな料理で、誰が、なぜ、どのようにして日本に持ち込み、これほど多く出店されるに至ったのか――。
こうした問いをテーマにした筆者の新刊『ガチ中華移民―日本に増殖する本場中華料理の謎』(太田出版刊)の刊行を記念したトークイベント「ガチ中華とインネパカレーの過去・現在・未来」が、4月17日、東京のジュンク堂池袋店で開催された。
当日は、同じく日本各地で数千軒とも言われるインドカレー店の経営の実情を描いた『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』(2024年 集英社刊)の著者である室橋裕和さんに登壇いただき、「ガチ中華」と「インネパ」という2つの異なる国のガチグルメの担い手たちにはどんな共通点や相違点があるのかを議論した。
「外国人労働者」や「移民」の実像を理解
「インネパ」とは、以前筆者が当コラムでも書いた「ガチネパ」と呼ばれる、ネパール人にとってのガチな現地料理を供する店ではなく、日本人を相手にナンとカレーの定食を供し、全国各地に出店しているネパール人経営の「インド・ネパール料理店」のことだ。
外国人労働者に対する就労要件が厳格化され、メディアでも「経営・管理ビザ」というワードが頻繁に飛び交う日本で、これから彼らの商売はどうなっていくのか。
2つの異なる国籍の外国人が営む料理店の実態を比較することは、今日の「外国人労働者」や「移民」の実像とその多様性を理解するうえで必要ではないか。こうした共通認識をふまえ、トークイベントの内容はお互いのフィールドを立脚点にその内情をリアルに語り合うというものだった。
『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』の著者である室橋裕和さんは週刊誌記者を経て、タイに移住。現地発の日本語情報誌に在籍し、10年間タイとその周辺国を取材、日本に帰国後は「アジアに生きる日本人」「日本に生きるアジア人」をテーマとしているジャーナリストだ。
現在は日本最大の多国籍タウンである東京の新大久保に在住。外国人コミュニティと密接に関わり合いながら取材活動を続けている。
そのため「外国人コミュニティから見る多文化共生の実情や問題点」などのテーマで講演する機会も多い。『ルポ新大久保』(角川文庫)、『エスニック国道354号線』(新潮社)などの著書もある筋金入りの日本の外国人問題の専門家である。
筆者と室橋さんの著書が世に出る背景には似たような理由がある。
『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』の取材が「なぜインドカレー店はこれほど多く、日本のどこにでもあるのか?」という素朴な疑問から始まったという話は、都内にこれまで日本に存在しなかった本場の中華料理店が急増したことに気づき、その実態を調べ始めた筆者のここ数年の姿とまるで同じだからである。
双方がお互いの仕事に共感を覚えたことが、今回のトークイベント開催につながった。
実際にはさまざまな話題がイベントでは交されたが、今回は「ガチ中華とインネパの比較分析」というテーマに沿って、イベントおよび事前の打ち合わせやその後の室橋さんとのメールのやりとりで得た知見を中心に紹介したい。以下は、両者の話を筆者が整理してまとめたものである。



