ガチ中華とインネパの共通点と相違点
まずガチ中華とインネパの共通のポイントは「出現時期」「出国要因」「ビジネスモデルと出店のプロセス」「うまくいく店といかない店の特徴」というところだ。
「出現時期」は、ガチ中華の場合、1980年代の改革開放以降に始まった中国人の大量出国が契機となり、1990年代半ばくらいから出店が始まり、少しずつ増えたが、激増したのは2010年代半ばからであった。
一方、インネパは高度経済成長期というかなり早い時期からインド料理店の厨房で働いていたネパール人がいて、彼らが1990年代後半から2000年代にかけて独立し始め、2010年代以降の留学生の増加にともない、爆発的に出店が増加している。
来日に至る経緯は、ともに両国の経済的な「出国要因」による「出稼ぎ」として始まっている(その後、中国では変容が起きるが、後述する)。
「ビジネスモデルと出店のプロセス」は、ともに留学生として来日後、飲食店を開業するキャリアパスがあり、同国人の先達によるサポートが出店につながっている。留学時代に居酒屋などでアルバイトした経験が、日本での飲食店経営の学びになっていることも共通している。
「経営がうまくいく店の特徴」は、地域の日本人としっかりつながることや女性客の取り込みに成功することである。
一方、「うまくいかない店」は、味に問題があることもそうだが、誰かが1つのヒットメニューや新しい業態で成功モデルをつくると、みんながそれを模倣する傾向があり、価格競争による共倒れのリスクを引き起こすところも似ている。それを中国では「内巻(ネイジュアン)」と呼ぶ。
では、ガチ中華とインネパにはどんな相違点があるのだろうか。
相違ポイントとしては「出店エリア」「出店形態」「料理の内容」「客層」「オーナーの経済力や教育レベル」などがある。
まず「出店エリア」が異なる。筆者が「豊島区や目黒区と同じ約30万人の中国の人たちが暮らす東京とガチ中華の正体」と当コラムで書いたように、ガチ中華は中国籍住人が多く住む大都市圏(特に首都圏)に集中している。
それに対し、インネパは全国津々浦々、室橋さんの指摘では、北海道の根室や沖縄の離島にまで出店されているという。首都圏で厳しくなった就労ビザは地方のほうが取得しやすいという背景もあるのだそうだ。
「出店形態」は、ガチ中華の場合、個人経営から多店舗展開するオーナー経営、中国の飲食チェーンのフランチャイズ店、高級店まで多様であるのに対し、インネパは、一部有力店はあるものの、大半は個人経営の小規模店であることだ。
「料理の内容」は、ガチ中華の場合、中国各地の地方料理や最新の現地の食のトレンドを持ち込んだ驚くほど豊富なバリエーションがあるのに対し、インネパは基本ナンとバターチキンカレーなどの各種カレーの定食メニューである。
「客層」は、ガチ中華の場合、経済力のある中国人客を主なターゲットとし、本場の味を提供しているが、インネパは日本人客がメインで、経営者の経済的背景から、ローカライズされた安価なセットメニューを提供せざるを得ないジレンマがあるという。
2025年末の在留人口数でいうと、中国籍が93万人に対し、30万人を突破したネパール人の「オーナーの経済力や教育レベル」は、前者に比べ後者はいずれも低いと言わざるを得ないのが実情である。理由は21世紀以降の中国が飛躍的に経済発展したからである。


