経済

2026.05.01 07:00

世界に広がるエネルギー危機、産油国の米国にも間もなく波及か

Getty Images

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大規模な石油危機が起きると、米国人の大半はまずガソリンスタンドでその影響を実感する。まさに今、その状況が起きている。米国が2月28日にイランへの攻撃を開始したことで、ホルムズ海峡を通る船舶の航行が混乱して以降、米国内ではガソリンとディーゼル燃料の価格が急騰している。輸送費の上昇が経済全体に波及するにつれ、食品価格も上昇し始めている。3月のインフレ率は、予想をはるかに上回る高い数値となった。

多くの米国人にとって、話はそこで終わっているように思える。物価は確かに上昇しているが、今のところ供給網は機能し続けているからだ。一方、世界では、これは単なる価格の問題ではなくなっている。既に供給の問題へと発展しつつあるのだ。

エネルギー輸送の要衝ホルムズ海峡の重要性

ペルシャ湾に位置するホルムズ海峡は、世界で最も重要なエネルギー輸送の要衝だ。平常時には、世界の石油消費量の約5分の1に当たる日量約2000万バレルが、この狭い海峡を通過していた。また、特にカタール産の液化天然ガス(LNG)の輸出でも重要なルートとなっている。

ホルムズ海峡の通行が遮断されると、その影響は即座に現れる。輸送量が多いというだけでなく、他に有効な代替手段がほぼ存在しないからだ。タンカーは、時間、費用、物流上の複雑さを増すことなく、単純に航路を変更することはできない。場合によっては、航路変更自体が不可能なこともある。

その結果が、現在私たちが目の当たりにしている状況だ。国際エネルギー市場ではリスク評価が見直され、供給が逼迫(ひっぱく)している。

米国以外の国々の深刻な状況

米国は世界有数の産油国であり、ペルシャ湾からの石油輸入への依存度が比較的低いことから、影響を受けにくい状況にある。しかし、世界の他の多くの国々には、こうした条件がそろっていない。輸入に依存する国では、既に緊張の兆しが見え始めている。

南アジアや東南アジアでは、燃料の輸送遅延や輸入費の上昇が供給に影響を及ぼし始めている。インドの液化石油(LP)ガス輸入の約9割はホルムズ海峡を経由している。同国では数百万世帯が調理用としてLPガスに依存している。現在の同海峡の封鎖により、国内では既に供給不足が発生しており、政府は各世帯への配給制の導入を余儀なくされている。

農業も懸念材料の1つだ。肥料の生産と貿易は、天然ガスや石油化学製品の供給と密接に関連している。世界の肥料貿易の約3割に加え、リン酸肥料に使用される硫黄やアンモニアの相当量が通常、ホルムズ海峡を経由している。

インドは、肥料の40%以上を中東から輸入している。モンスーン期の作付け時期が近づくにつれ、同国のパンジャブ州やハリヤナ州では、農家による肥料の買い占めが発生している。国際エネルギー機関(IEA)は、5月までに肥料の供給が安定しなければ、作柄に直接的な影響が及ぶと警告している。

欧州の状況は様相こそ異なるものの、深刻さは変わらない。欧州は2022年以降、ロシア産原油への依存度を低減させてきたものの、石油製品については依然として国際市場に依存している。

欧州のジェット燃料輸入の約半分は中東産だ。IEAは最近、欧州は6月までに深刻なジェット燃料不足に陥る恐れがあると警告した。既に複数の大手航空会社が燃料を節約するため、頻繁に運航される国内線や短距離路線を削減しながら、特定の国際線を優先し始めている。

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翻訳・編集=安藤清香

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