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2026.04.30 07:00

低コスト・無人化・低技術──イラン紛争とウクライナ戦争で決定的になりつつある「非対称戦」

2025年9月。ウクライナのドネツク州内の非公開の場所で、武装地上ロボットを用いて訓練を行っている (Photo by Diego Herrera Carcedo/Anadolu via Getty Images)

2025年9月。ウクライナのドネツク州内の非公開の場所で、武装地上ロボットを用いて訓練を行っている (Photo by Diego Herrera Carcedo/Anadolu via Getty Images)

イランとウクライナで被害が拡大する紛争において、新たな戦場の力学が静かに形を成しつつある。長らく、はるかに大きな軍事力と戦うゲリラ部隊や反乱勢力の常套手段だった非対称戦が、イラン軍とウクライナ軍の戦い方の重要な一部になったのだ。こうした新たなツールと戦略の効果が際立っていることを踏まえると、私の見立てでは、非対称戦は当面の間、国際紛争の中核を占める可能性が高い。

米イスラエル連合の攻勢に対し、イランは非対称な対応を展開

2カ月弱の間に、米国とイスラエルの合同軍事作戦はイランの軍事力を無力化し、通常戦力による防衛能力を大幅に低下させることに成功した。米・イスラエルの攻勢は現時点でイランに対して1万7000回を超える空爆を実施し、弾道ミサイルとドローンの主要製造施設を攻撃したほか、イラン海軍の大半を沈め、各地に分散する部隊に対する政権の指揮統制能力を混乱させ、イランの防衛産業基盤の重要部分を壊滅させた。

それでも、イランが非対称の有効な反撃を打ち出すことは妨げられていない。イランは従来型ではない兵器と戦術を取り入れ、敵対勢力の行動を阻んでいる。兵器面では、イランは低コストのドローンを大量に保有しており、戦前の推計では保有機数が数万機に達するとされたが、これを用いて中東全域で米国とイスラエルの標的を攻撃している。さらにイランは、防空システムを混乱させるため、弾道ミサイルの発射数を時に1桁台に抑えつつ、それに伴わせてドローンを数百機規模で高頻度に投入してきた。これにより、ミサイルが防空網を突破し、最大限の損害を与えることがしばしば可能になっている。

加えて、イランの「シャヘド」ドローン(2万5000〜5万ドル[約400万円~800万円。1ドル=160円換算])と、それを撃墜するために米国がしばしば用いるミサイル迎撃弾(1発あたり約400万ドル[約6億4000万円])の圧倒的なコスト格差が、テヘランの低コスト・ドローン作戦を対処の難しい脅威にしている。

イランは湾岸諸国へ紛争を拡大し、ホルムズ海峡を事実上閉鎖

一方でイランは、戦争の趨勢を変える2つの非対称的な戦場判断を下した。1つ目は、紛争勃発時に米国とイスラエルだけを攻撃するのではなく、直ちに紛争を拡大し、湾岸諸国の近隣国を巻き込んだことだ。これにより、とりわけ米国にとって賭け金が大きく跳ね上がった。米国は湾岸諸国と堅固な関係を持ち、地域内に重要な軍事基地を複数分散配置しているうえ、深い経済的結びつきもあるからだ。

これまでのところ、イランは湾岸協力会議(GCC)加盟6カ国すべてに対し、主にエネルギーインフラと経済目標を狙ったミサイル・ドローン攻撃を実施している。これらの攻撃は、世界のエネルギー、金融、観光の拠点として「地域の安全な避難先」という湾岸の評判を傷つけただけでなく、湾岸の同盟国への支援を強化し、その目的のために米軍の戦力を振り向けるようホワイトハウスに対する圧力を高めた。

そしておそらく最も重要なのは、イランが一連の非対称的行動の組み合わせによって、要衝ホルムズ海峡を通る商業航行を事実上閉鎖したことだ。世界の総石油供給量のおよそ20〜25%が毎年この海峡を通過している。ここ数週間、ドローンやミサイルで海峡通航を試みる船舶を無作為に攻撃したほか、革命防衛隊(IRGC)の高速艇を用いて海峡に機雷を敷設したとも報じられている。こうした限定的攻撃と、エスカレーションを辞さないという公然たる脅しの組み合わせだけで、この海域の商業航行は停止に追い込まれ、世界的なエネルギー危機を誘発した。

つまりイランは、はるかに優勢な米・イスラエルの軍事連合と正面から渡り合うのではなく、別の道を選び、非対称戦の重要性が増していることを日々示している。

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