ギルは、AIの普及速度を考える上で有用になり得る枠組みも提示する。「クローズドループ」のタイトさである。ソフトウェアエンジニアリングのように、AIが自律的に試し、失敗し、反復できる仕事は、フィードバックのサイクルが短く測定可能であるため、最も早く置き換えが進む。
一方、経営コンサルティングや戦略立案のように、フィードバックループが遅い、あるいは曖昧な仕事は時間がかかる。ギルはこのマトリクスの最上段にソフトウェアエンジニアリングを置く。これが、Cursorのようなコーディングツールが資金を集めた理由の説明にもなる。設立から3年未満であっても、だ。
「通貨としての計算資源」という捉え方も、ギルが時間を割いて展開する論点だ。トークン予算は、給与と並ぶ組織の投入要素になりつつあるという。そうなると、企業のタイプごとに、計算資源支出と人員規模の適切な比率はどの程度かが問われる。すでにこの分析を進めている企業もあると、彼は指摘する。彼の読みでは、Cursorをはじめとする開発者向けツールは、ユーザー獲得戦略として推論コストを実質的に補助している。これは利益率を圧縮する一方で、継続利用につながる日々の使用習慣を築く。
投資家にとって、ギルのテーゼは、いくつかの具体的な賭けへと収れんする。
計算資源の制約が続く間は主要なフロンティアラボへの持続的なエクスポージャーを確保すること、高付加価値の垂直領域で独自のクローズドループデータシステムを構築する企業に注目すること、そしてモデル性能だけに堀(moat)を依存し、ワークフローのロックインに依拠しないAI企業には懐疑的であることだ。
創業者へのエグジットの助言は、成長期投資家への含意も帯びる。すなわち、二次市場の流動性とAI分野のM&Aは、2025年を通じて、さらに2026年にかけて加速するはずだ。こうしたロジックを吸収した創業者が「出口」を探し始めるからである。
ギルはこれまでもタイミングを当ててきた。彼はColor Genomicsの共同創業者であり、Twitter(現X)では事業開発担当VPを務めた。2018年の著書『High Growth Handbook』は、レイターステージのスタートアップ運営者にとって標準的な参照文献となった。
計算資源の天井が保たれるのか、エグジットの好機が2027年まで存在するのか、そしてGDPの計算が予測どおりに展開するのか──いずれも未解決だ。しかしギルが用いている分析の骨格、すなわちクローズドループ、通貨としての計算資源、ハードウェア制約が生む寡占は、いま自分が置かれているポジションが何であれ、自らの前提をストレステストするに足る厳密さを備えている。


