働き方

2026.05.10 12:00

AGI後の人間の労働価値を問い直す

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人間の価値が優位に立つという見方

ここで、最近のSubstack投稿から、アレックス・イマスによる新しい分析を見てみよう。この投稿は、私のお気に入りのポッドキャストでも取り上げられた。名司会者ナサニエル・ウィッテモアは、いつものように、その記事全文を一字一句そのまま読み上げた。イマスは、多くの工程を自動化したスターバックスが方針を転換したことに触れて論を始める。顧客は依然として、自分が飲むカフェラテに人間らしさを求めていたからだ。

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「経済学とは、制約、すなわち希少性の下での意思決定を研究する学問だ」と彼は書き、議論の前提を示す。

「高度なAIが物質的な豊かさをもたらすとしたら、つまり機械が、人間が生み出してきたものの多く、場合によってはすべてを非常に低い限界費用で作れるようになるとしたら、経済学は意味を失うのだろうか。いや、希少性はなお存在する。ただし、重要になる希少性の種類が変わるのだ」。

労働をコモディティーとして捉える古典的マルクス主義

続けてイマスは、古典的マルクス主義の分析に踏み込み、労働をコモディティー(汎用的な商品)と見なす立場を次のように特徴づけている。

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「もし機械が人間にできることを何でもできるなら──企画書を書き、画像を生成し、曲を作り、放射線画像から診断を下せるなら──人間は生産のあらゆる局面で置き換えられ、仕事は単純に消滅するだろう。労働は資本に置き換えられるのだ」。

人間の専門性は再構築されるのか、失われるのか

しかしイマスは、異なる見方を示すデイヴィッド・オーターとニール・トンプソンの論文を引用する。

「彼らの主張によれば、AIは単に仕事をなくすのではなく、人間の専門性が持つ経済的価値を再構築する。彼らのフレームワークでは、あらゆる職業の中にある『専門的タスク』と『非専門的タスク』を区別している。

自動化がより単純なタスクを取り除くと(会計ソフトが簿記係に対して行ったように)、残る仕事はより専門化し、賃金は上昇し、その仕事をこなせる人材は少なくなる」。

その上でイマスは、同じ著者たちが仕事の崩壊に近いシナリオも「検討している」と指摘する。

「より深刻な可能性もありえる。AIが進歩し、人間の専門性がその経済的価値を完全に失うというシナリオだ。この場合、AIは労働の希少性を失わせ、ハーバート・サイモンがかつて『耐えがたい豊かさ』と呼んだものを生み出すだろう
(訳注:サイモンは1960年代の著書で、自動化によって生産が過剰になり人間の労働が不要になるシナリオをこう呼んだ。しかし本人はそれを杞憂と見なしていた。イマスはAGIの登場でその可能性が現実味を帯びつつあるという文脈で引用している)。

これまでの自動化では、労働力をどう移行させるかが課題であり、過去の事例を参考にすることもできた。しかしこのシナリオでは、そもそも労働市場自体が機能しなくなる。社会組織、所得分配、民主主義の安定を、労働市場なしに維持する手段が必要になるのだ」。

これは、人間の価値が最終的には勝利すると考えない人々から出てくる類の、厳しく背筋の凍るような議論だ。

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翻訳=酒匂寛

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