BTS完全復帰の裏で「生みの親」を直撃した詐欺的不正取引疑惑

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2000億ウォンの不当利得を得た!?

事件の核心は2019年ごろに遡る。韓国警察の見立てによると、パン氏は、当時、HYBEの初期投資家たちに対して「上場計画はない」と説明し、その言葉を信じた既存株主たちに持ち株を売却させた。ところが実際には上場準備を着々と進めていた疑いがあると警察は見ている。

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さらに、パン氏と関係する私募ファンド(プライベート・エクイティファンド)との間で、上場後の売却益の一部を受け取る非公開契約があった可能性も指摘されており、これによってパン氏は約2000億ウォン(約200億円)規模の不当利得を得たと当局は疑惑を持っている。

要するに、「上場予定がない」という虚偽の説明で投資家をミスリードし、株を彼らから安価に買いたたいたうえで、上場後の利益を別ルートで取り込んだのではないかという点がこの事件の核心だ。

資本市場法における「詐欺的不正取引」は、有価証券の売買その他の取引について虚偽の表示や重要事実の隠蔽を行い、他者に損害を与える行為を対象とする。有罪が確定した場合、刑事罰として懲役刑や巨額の罰金が科される可能性がある。

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今回の問題に対して、パン氏側は、「長期間にわたって捜査に誠実に協力してきた」にもかかわらず、拘束令状が請求されたことについて「遺憾である」と表明した。今後の法的手続きにも真摯に応じ、十分に説明を果たすとしている。

一方、当局側の動きだが、これも一直線ではない。注目すべきは、検察が4月24日、現段階では「拘束の必要性」を示す説明が不足しているとして、警察に補完捜査を求め、拘束令状をいったん差し戻した。

つまり整理すると、当局側の捜査は継続しているが、直ちに身柄拘束へ進む状況ではない、というのが現時点の状況だ。捜査機関としては、今後、証拠の補強や関係者の再聴取を経たうえで、あらためて令状請求に踏み切るかどうかを判断するとみられる。

韓国の法曹関係者の間では、今回の差し戻しについて「身柄拘束には至らなかったものの、疑惑そのものが消えたわけではない」との見方が多い。むしろ捜査が長期化することで、HYBEのガバナンスや経営への疑念や不透明感が続く可能性がある。

このスキャンダルが市場を揺るがしたのは、タイミングの悪さもあった。BTSの各メンバーは2022年から順次軍隊に入隊し、兵役を終えたメンバーが2025年初頭から次々と帰還。2025年後半には完全体でのワールドツアー再開が現実味を帯びており、投資家や市場関係者はHYBEの大幅な業績回復を期待していた。

ところが、経営トップへの司法リスクが枷となり、HYBE株は下落圧力を受けた。BTS復帰という好材料があっても株価が伸び悩むという、異例の状況が生まれたかたちだ。

市場アナリストの間では「BTS復帰による成長期待は依然として高い。しかし創業者のオーナーリスクが当面のボラティリティ要因として機能している」との見方が支配的だ。

機関投資家の間でも、ESG(環境・社会・ガバナンス)観点からのリスク評価が厳しくなっており、ガバナンスに関する不透明感は長期保有を躊躇させる材料になりえている。

また、上場芸能事務所という業態そのものへの問いかけという側面もある。K-POP事務所は、特定アーティストへの依存度が高く、ファンダム経済に基づく独特のビジネスモデルを持つ。

株式市場への参加は資金調達と知名度向上をもたらす一方で、上場企業としての情報開示義務やコーポレートガバナンスの要求を満たすことが求められる。今回の疑惑は、まさにその「上場企業としての透明性」が問われているケースと言える。

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文=アン・ヨンヒ

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