食&酒

2026.05.05 15:00

山口智子が選んだ仕事|山口智子×小山薫堂スペシャル対談(後編)

放送作家・脚本家の小山薫堂が経営する会員制ビストロ「blank」に、俳優の山口智子さんが訪れました。スペシャル対談第22回(後編)。


小山薫堂(以下、小山本日ご持参いただいたCDですが、すごい枚数ですね!

山口智子(以下、山口「ベサメムーチョ」というラジオ番組(BAYFM毎週土曜日18時~)でパーソナリティを務めていて。旅先で買い集めた大量のCDをいつも持参し、旅の思い出とともに曲を流しています。

小山:なるほど。出合った音楽や旅そのものが、ご自身のお芝居に影響している実感はありますか。

山口:お芝居というより、人生そのものを豊かに彩っている感じですね。結局、俳優の道を追求するということは、さまざまな人間と出会って、感動を重ねていくしかないのではないかと。いつか台詞を発さなくても存在感だけで人の心を打つ人間になりたい。まだまだ修業の道です。

小山:俳優デビューはNHKの連続テレビ小説「純ちゃんの応援歌」ですよね。

山口:それがちょっと運命的な出会いで。実家の旅館業を継ぐのが嫌で東京に出てきたのですが、初めて演じることになった役が、旅館の女将だったんです(笑)。

小山:それはご家族も喜んだのでは?

山口:当時、女将をしていた祖母は、「自分の人生を演じてくれている」という感覚になったみたいで、結局、私の選んだ道を応援してくれました。

小山:演じたとき、「やっぱり旅館の女将は面白いかも」とは思わなかったんですか。

山口:愛がないと続かない大変な仕事だなと痛感しました。祖母は24時間すべてを女将業に捧げていたので。でも、ドラマや映画で夢を生み出す仕事も、お客様を喜ばせる女将業も、同じエンターテインメントの世界だなとは思います。

テレビという媒体の奥行き

小山:その後も「ロングバケーション」含め、多くのドラマで主演を務め、「平成の視聴率女王」とも称された。そういうヒットの最中にいるときって、どんな心境なんですか。

山口:演技はまったくの素人という状態で、突然この世界に飛び込んだので、私を必要としてくださる場に赴いて、全身全霊ですべてを捧げるという感じでした。反響というものを考える余裕すらなかった。目の前の壁を乗り越えるのが精一杯。でもこの道を追求するからには、もっと学びたい。世界をもっと知りたい。そんな思いが膨らんで、旅から旅へと向かうようになったんです。

小山:まずはどこに向かったんですか。

山口:ポルトガル。ひとりで隅々まで旅しました。あとはアートドキュメンタリーなど、旅して未知の世界と出合える仕事を積極的に選んでいました。異国の文化に出合えば出合うほど、我が故郷日本がいかに影響を与えていたかも見えてきて、日本人として誇りを見いだせるようになりました。

小山:山口さんは、2023年に「兼高かおる賞」も受賞されていますね。兼高さんといえば、世界各国を旅した日本の女性ジャーナリストのはしり。まさに彼女の後を追っているというか。

山口:まだ小学生のころ、お茶の間のテレビを通して、世界には出合うべき素晴らしい輝きが満ちていることを教えてくれたのは、「兼高かおる世界の旅」の旅です。上品で美しく知的な兼高さんが、ジャングル奥地まで果敢に乗り込んでゆく冒険の旅に心がときめきましたね。

小山:僕もあの番組は大好きでした。兼高さんって超お嬢様だけど、天然なところがあって、そこがチャーミングですよね。

山口:ミニスカートで象の背中に乗ったり、どんな秘境でも日本女性としての気品を忘れず、サルバドール・ダリとかジョン・F・ケネディとか名だたるジェントルマンを取材したり。いまではもう撮影不可能な地球の宝を体当たりで取材された映像アーカイブは、素晴らしいのひと言。

次ページ > 昔のテレビって本当に面白かった

写真=金 洋秀

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事