経済・社会

2026.04.29 14:15

ハンガリー総選挙で野党が圧勝してウクライナ融資にEU加盟27カ国が合意

ハンガリー国会議事堂(高橋 清孝 - stock.adobe.com)

ハンガリー国会議事堂(高橋 清孝 - stock.adobe.com)

「私たちはよいニュースを携えてキプロスへ向かっている」

4月23日、欧州連合(EU)のウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長は、議長国キプロスで開かれた非公式の首脳会合への出席を前に、Xへこう投稿した。

ウクライナへの900億ユーロ(約17兆円)の融資やロシアに対する20回目の経済制裁を行うことで、加盟27カ国が合意したのを歓迎する内容であった。

拒否権連発していたハンガリー首相

このウクライナ融資が決まったのは、これまで拒否権を行使していたハンガリーなどが承認したためだ。

EUのウクライナへの融資は昨年12月に合意されたが、ハンガリーとスロバキア両国が拒否権を行使。最終承認が保留されていた。

EUの理事会は大国と小国のバランスなどを考慮した「特定多数決」が原則。だが、「安全保障、治安、税制など加盟国にとってセンシティブな事項をめぐっては、全会一致による議決が行われる(岩波新書刊『EU 統治の論理と思想』)」ことになっている。
 
「反EU、反移民」を掲げ、親ロシア派として他の加盟国と一線を画してきたハンガリーのヴィクトール・オルバン首相はこれまでに拒否権を連発。EUには大きな障害となっていた。2023年のEU首脳会議でウクライナとの加盟交渉を進めるかどうかを採決する際には、同首相が退席を求められるという前代未聞の出来事もあった。
 
しかも投票前にはハンガリーのオルバン政権のシーヤールトー・ペーテル外務貿易相がロシアのセルゲイ・ラブロフ外相にEUの機密情報を漏洩していた事実も発覚。ハンガリー以外のEU加盟国の怒りを買っていた。

「ロシア人は帰れ」と投稿したポーランド首相

そのオルバン首相率いる与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」が、4月12日に行われたハンガリーの総選挙で惨敗。これまで強権政治を貫いてきたが、16年ぶりに政権交代が実現する運びとなった。
 
今回、政権長期化に伴う汚職などの腐敗、言論への統制、経済の停滞などに不満を募らせた多くの若者が投票へ足を運んだ。特にインフレは深刻で、EU委員会統計局によると、2023年の消費者物価は前年比17パーセント増とEU加盟国で断トツの上昇率だった。
 
選挙では、「欧州への回帰」を掲げた中道右派の新興政党「ティサ(尊重と自由)」が圧勝。全体の3分の2以上の議席を獲得し、単独で憲法改正などを行うことが可能になった。党首を務めるペーテル・マジャル氏が5月初旬、次期首相に就任する見通しだ。
 
大敗を受けてオルバン首相はウクライナを経由しロシア産原油をハンガリーなどへ運ぶドルジバ・パイプラインが再開され次第、拒否権を撤回する意向を表明していた。

同パイプラインはロシアの空爆でウクライナ領を通る箇所が損傷を受けたが、ウクライナのボロディミール・ゼレンスキー大統領は同パイプラインの修復が終わったことを発表した。

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文=松崎泰弘

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