この分析結果を受けて、研究者らは、「分離呼びかけ仮説(separation call hypothesis)」を打ち立てた。感情を高ぶらせる音楽に含まれた特定の音響パターンが、もともとは社会的な分離不安を処理するために配線されていた古代哺乳類の神経回路を刺激した可能性があるという説だ。つまり、特定の音が、親から引き離された幼児や、仲間から離れてしまった人の悲しむ声をかつて感知していた基質を呼び起こした可能性がある、ということだ。交感神経は、オンになる理由を特に気にせず、ただ反応するだけだ。
2011年にはさらに、『Nature Neuroscience』で興味深い研究が発表された。こちらの研究では、脳内のドーパミン受容体に結合する分子である「放射性リガンド」を用いたPET(陽電子放出断層撮影)スキャンを実施した結果、音楽に対する情動的反応のピーク(鳥肌が立つ瞬間)が、脳の線条体において、測定可能なドーパミンが放出されたことと関連していることが明らかになった。
線条体の一部である側坐核が、体験そのもののさなかに活性化する一方で、神経核の尾状核は、ピークを予期して活発になった。注目すべきは、これが脳の中核的な報酬回路であり、食や身体的快楽、社会的つながりを処理する際のシステムでもある点だ。こうした観点から見ると、鳥肌は、脳が意義深いと分類した瞬間を、体が受容したことを示す現象となったと言える。
古代における立毛反射の仕組みは、ヒトの並外れて精巧な社会的・審美的な脳回路によって転用され、新しい役割を見つけたわけだ。
鳥肌から何がわかるのか
進化は、容赦ない最適化のプロセス、すなわち、うまく機能するものだけを残し、それ以外は切り捨てるプロセスとしてイメージされることが多い。しかし、そのイメージを混乱させるのが鳥肌だ。
全身を毛に覆われていた人類の祖先が、暖かい空気を封じ込めて断熱効果を高める上で進化させた反応は、それから数百万年の後に、弦楽四重奏曲を聴いた時に示す身体的な反応の一つへと変わった。かつては体温調節用のツールとして先頭に立ち働いていた立毛筋は、ドーパミンの放出と、社会的感情のピークを知らせるシステムの一部に落ち着いた。
生物学者としての私が感銘を受けるのは、こうした現象によって、痕跡性という概念そのものが見直されることだ。私たちは、痕跡形質は進化の余り物だとみなす傾向がある。例えば、虫垂や親知らずなどは、もはや役目を失った用途の名残りだと考えがちだ。そして、これはある意味で正しい。鳥肌が立っても、暖かさは保たれないからだ。けれども、鳥肌を立てる仕組みには、別の「何か」がまだ存在している。
次に、映画音楽を耳にしたり、思いがけない美しさに遭遇したりして肌がぞくぞくとした時は、その裏側で何が起きているのかを考えてみてほしい。寒さや危険を感知した時のために備わっていた古代の交感神経の反応が発火したのは、社会脳が、意義深い何かを感知したからなのだ、と。
このメカニズム自体は古いものだが、まったく新しい形で応用されている。なぜなら、良い回路を進化が無駄にすることなど、めったにないのだから。


