経営・戦略

2026.04.27 18:30

スペースXの「278兆円IPO」はテスラに逆風か、「マスク神話」の主役交代の可能性

JHVEPhoto - stock.adobe.com

JHVEPhoto - stock.adobe.com

イーロン・マスク率いるスペースXの新規株式公開(IPO)は、自社の企業価値の正当化に苦慮する電気自動車(EV)メーカーのテスラから、投資家の注目や資本を吸い上げる可能性がある。テスラが直面する最大の問題は、もはや中国勢との競争でも、EV需要の減速でも、ロボタクシーや人型ロボットからの──いまだ理論上にとどまる──収益でもないのかもしれない。テスラを脅かすのは、スペースXだという見方が上がっている。

advertisement

イーロン・マスクの宇宙開発企業「スペースX」が、噂される1兆7500億ドル(約278.25兆円。1ドル=159円換算)規模の企業価値でIPOを行えば、それは史上最大級のIPOになるだけではない。このIPOは、マスクの公約の実現を待ち続けることに疲れたテスラの投資家に、ここしばらく手にしていなかったものをもたらすことになる。それは、マスク神話に賭けるための、より大きく、より刺激的な選択肢だ。

確かに、長年社長を務めるグウィン・ショットウェルの下で堅実かつ安定した経営を続けるスペースXは、マスク神話に賭けるための、より輝きのある代理銘柄になりつつある。スペースXには競合企業がほとんどなく、四半期決算のたびに「自動運転でいつウェイモに対抗できるのか」「人型ロボットをいつ実用化できるのか」と気まずい質問を浴びせられることもない──テスラとは違って。

「スペースXの方が、多くの理由で優れた投資先だと見るテスラの投資家は多い」。テスラの投資家でもあるロス・ガーバーはこう語った。同氏は、運用資産40億ドル(約6360億円)超のカリフォルニア州サンタモニカ拠点の資産運用会社、ガーバー・カワサキのCEOを務める。

advertisement

「私がテスラ株を売っても、割高な株を手放したと受け止められるだけだ。もし話題性や成長への期待に賭けるなら、私はスペースXを買う。他の人々もそう考えている。多くの人は、簡単に利益を狙える投資になると見ている」。

テスラの第1四半期決算、EV販売の頭打ちとAI関連事業への転換を浮き彫りに

テスラは、黒字を維持してはいるものの、ブランドを築いてきた中核事業であるEV販売を軸とする事業モデルからの根本的な転換期に入っている。EV販売が頭打ちになるなか、同社のAI関連の新事業が本格的に収益貢献を始めるのはまだ先のことだ。テキサス州オースティンに本社を置くテスラが先週発表した第1四半期決算は、その状況を浮き彫りにした。

同社の純利益は、前年同期比16%増の4億7700万ドル(約758億円)に達した。前年同期は、反マスクの抗議活動にブランドが揺さぶられたうえ、モデルYのSUVを改良版へ切り替えるため生産を減らしていた。ただし、この利益水準は、2025年10〜12月期の8億4400万ドル(約1342億円)を含む直近3四半期を大きく下回る。昨年の明るい材料だったバッテリー事業も、第1四半期は12%縮小した。全体の売上高は16%増の224億ドル(約3.56兆円)となったが、これも直近3四半期の水準を下回った。

テスラは、人間の安全ドライバーを乗せて主にテキサス州で運行している小規模なロボタクシー事業からの売上高をまだ計上していない。同じく、将来の収益源として期待される人型ロボット「オプティマス」もまだ量産開始前であり、売上高はゼロだった。ただし同社は、マスクが描くAIとロボットの構想を実現するため、少なくとも250億ドル(約3.98兆円)を投じる計画だ。テスラ株は4月23日、3.6%安の373.72ドルで取引を終えた。同社の株価は、年初来で約17%下落している。

次ページ > テスラのブランド価値が35%急落、マスク効果が高い株価を支える

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事