経営・戦略

2026.04.27 18:30

スペースXの「278兆円IPO」はテスラに逆風か、「マスク神話」の主役交代の可能性

JHVEPhoto - stock.adobe.com

テスラのブランド価値が35%急落、マスク効果が高い株価を支える

世界のトップブランドのランキングを毎年発表しているインターブランドのCEO、ゴンサロ・ブルホは、「テスラは今、戦略よりも信念が大きな役割を果たすブランドになっている。本当の試練は、この構図がどれだけ長く続くかにある」と語った。テスラのブランド価値は2025年に35%急落した。主な要因は、マスクへの反発が強まったことだ。マスクがトランプ政権で政府効率化省(DOGE)に関わったことや、欧州の極右政治家を支持したことが、その背景にある。

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「テスラのブランドは、経営トップの存在が差別化要因ではなく、むしろ注意をそらす要因になったことで勢いを失った。現在はマスクの存在感が世論の中で以前ほど圧倒的ではなくなり、その圧力はいくらか和らいでいる。しかし、それがブランドの復活につながったわけではない。単に悪化が止まっただけだ」とブルホは述べた。

英国の投資顧問会社AJベルで市場部門を統括するダン・コーツワースは、スペースXがテスラと同じ道をたどる可能性があると指摘する。2010年のテスラのIPO後に起きたことの再現だというのがその見立てだ。なお、AJベルはテスラ・スペースXのいずれについても投資評価を出していない。

「テスラはEVで先行者利益を得た。非常に高い評価を築き、株主は大きな利益を得た。だが今や競合が追いつきつつあり、一部の分野ではテスラを追い越しているとも言える」と彼は語った。「長年テスラ株を保有してきた投資家の中には、『もう十分に利益を得た。スペースXは宇宙経済で先行者利益を取ろうとしており、現時点では競合との差も非常に大きい』と考える人がいるかもしれない」とコーツワースは続けた。

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スペースXの企業価値が約278兆円となり、テスラの評価はまだ控えめに見える

マスクが現代のEV市場を切り開いたこと、テスラが2012年発売のセダン「モデルS」をきっかけに大きく成長したこと、マスクが「画期的な技術は間もなく実現する」と繰り返し訴えてきたこと。これらが、投資家の期待をつなぎ留めている。こうした期待が、テスラ株を予想利益の約200倍という高い水準で支えている。同じく「マスク効果」によって、テスラの時価総額は今年の推定売上高である約1000億ドル(約15.9兆円)の12倍に達している。

しかし、スペースXと比べれば、テスラの評価はまだ控えめに見える。ロケット企業であるスペースXのIPO時の企業価値は、1兆7500億ドル(約278.25兆円)に達すると予想されている。この評価額は、衛星インターネット事業「スターリンク」を主な収益源とする同社の今年の推定売上高220億ドル(約3.5兆円)の約80倍に相当する。

また、マスクが約束している宇宙空間のデータセンターのような新事業は魅力的に聞こえるものの、近い将来に実現可能な事業になるとは限らない。ロイターが確認した同社のS-1届出書の抜粋には、「軌道上でのAIコンピューティングや、軌道上、月面、惑星間での産業化を進める取り組みは初期段階にあり、重大な技術的複雑さと実証されていない技術を伴うため、商業的に成り立つ事業にならない可能性がある」と記されていた。

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翻訳=上田裕資

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