ホルムズ海峡の封鎖が長引けば世界規模の景気後退が起こるだろう。そして、米国をはじめ多くの国がそれに巻き込まれる。対イラン軍事作戦の帰結を予測することは、本稿執筆時点において少なくとも筆者には不可能だ。しかし、長期にわたる石油供給の混乱は間違いなく景気後退を引き起こす。ここでは、ホルムズ海峡の封鎖が1年に及んだ場合に生じる経済的影響について考察してみよう。
エネルギー消費量の減少
広く報じられている統計のとおり、世界の原油生産量の約20%がホルムズ海峡を通過している。そして、石油は世界のエネルギー生産の約3分の1を占める。つまり、世界で生産される全エネルギーの約7%がホルムズ海峡に依存していることになる。しかも、これは控えめな見積もりだ。湾岸の原油の一部は他の製品の原料となるからだ。実際の数字がどうであれ、世界経済に影響するには十分な規模である。
原油価格の動向に注目が集まっているが、価格という指標は核心を覆い隠している。海峡が封鎖されれば、私たちが消費できるエネルギーは減少するのだ。利用可能なエネルギーを誰が使うのか、その配分方法をどのように決めようとも、この事実は変わらない。
たとえばくじ引きをした場合、外れを引いたらエネルギーを一切使えなくなる。第2次世界大戦中に多くの国がやったように配給制を導入してもいいが、ほとんどの人は多かれ少なかれエネルギー使用量を減らさなければならないだろう。配給待ちの列が後ろになるほどガソリンの割り当てを増やすという手もあるが、早く手に入れなければならない人ほど単純に得られるエネルギーが少なくなる。したがって決定的な問題は、買い手から売り手への金銭の移転というよりも、単に売り買いできるエネルギーが少なくなるという点にこそある。
消費者の金銭的損失
とはいえ、金銭の移転によって生じる二次的影響も大きい。消費者が支払うガソリン代は高くなり、商品を店舗や家庭に届ける際の運送にかかるディーゼル燃料代も値上がりして、間接的に消費者の負担となる。エネルギー支出の増加分は石油会社の懐に入り、最終的には消費に回るが、この過程には時間がかかる可能性があり、しかも消費者が支出を削減した分野とは異なるところで消費されるかもしれない。自動車、衣類、旅行、レジャーなど、一般消費財を製造・販売する企業は売上が減少し、従業員を解雇せざるを得なくなるだろう。



