デビッド・マットソン(Sandlerエグゼクティブ・チェアマン)—営業の次なる進化。
アカウント成長を求める営業リーダーに会うと、すべてのアカウントが本質的には同じように振る舞うかのように行動しているケースは、いまも珍しくない。本人はそのように振る舞っている自覚がないこともあれば、それが世界の仕組みだと信じていることに気づいていない場合もある。さらには、自分がそう信じているはずがないと否定することすらある。だが重要なのは行動である。そして、アカウント成長に関して多くの営業リーダーが取っている行動は、複数の異なるアプローチを必要とする問題に、万能の戦略を当てはめていることを示唆している。
これは、すべての営業担当者を同じ方法でコーチングし、同じ方法でマネジメントすべきだと言っているのと同じであり、それが真実ではないことは誰もが認めるところだろう。
避けるべき高コストの誤り
すべてのアカウントに同一のアプローチが必要だと仮定するのは、コストの高い誤りである。複雑なアカウントを拡大するための唯一有効なプレイブックがあるかのように振る舞うことになるが、実際には存在しない。普遍的なTo Doリストは機能しない。機能するのは、アカウント内で動く人々やチームを綿密に観察したうえで組み立てる、高度に差別化された一連の戦略である。
2つ目の誤りも同様に重大で、活動を進捗と混同することだ。営業リーダー、あるいは最前線の営業担当者が、電話の本数が増え、ミーティングがより多く設定・実施され、主要人物との関係性が深まりつつあるのを見て、売上拡大の機会が前に進んでいると判断してしまう。しかし、特定のアカウント固有のエコシステムに合わせて明確な意図が定義されていなければ、進捗は生まれない。アカウントを成長させて前進するには、明確な戦略目標を設定したうえで、別のレンズ——「関係性」というレンズ——でアカウントを見る必要がある。
つまり、アカウントの規模や売上ポテンシャルといった要素だけでなく、アクセス、影響力、役割、そして実際の(および認知上の)リスクといった、根本的に人間に関わる要因に焦点を当てるということだ。
関係性マップを読み解く
関係性マップは、この種の分析の実践的な出発点となる。これは、組織の「X線写真」のようなものだと考えるとよい。例えば次のような問いへの答えに導いてくれる。誰が重要で、なぜ重要なのか。誰が誰に影響を与えるのか。誰が通常決定するのか。誰が抵抗するのか。私たちは誰をよく知っているのか。誰をもっとよく知るべきなのか。いまは知らないが、知るべき相手は誰か。彼らは以前どこで働いていて、そのとき誰から購入していたのか。もちろん、この分析から得られる答えは、各アカウントごとに完全に固有のものになる。
関係性マップを始める良い方法は、組織図を丹念に見ることだ。アカウントの複雑さに応じて、運用の階層は異なる可能性が高い。まずはアカウントの構造を大づかみに理解し、その後、把握できる主要人物の名前と役割を特定していく。ただし、名前と役割は出発点にすぎない。このマップが真に価値を生み始めるのは、各コンタクトと自社チームとの関係性の質について、明確な評価を加えるように更新したときである。
基本のカテゴリは3つだ。強い関係、中立の関係、リスクのある関係である(関係がない場合は、そのコンタクトはリスクありと考えるべきだ)。これらは、ゴールド、シルバー、ブロンズと表現されることもある。考え方はシンプルで、自分たちがどこで強く、どこで脆弱で、どこで存在が見えていないのかを把握したいのである。
よくある盲点は、単一のコンタクトに過度に依存することだ。居心地の良さを安全性と取り違えてはならない。あるいは、相手が電話を折り返してくれることを、組織としての足並みがそろっていることと混同してはならない。関係性マップは、主要人物へのアクセスを深め、広げるための次のステップへと私たちを導いてくれる。
重要なリスクシナリオの1つは、主要コンタクトが退職間近である、別部門へ異動する、あるいは組織変更の結果として解雇されるかもしれない、といった場合だ。私たちのバックアップコンタクトは誰か。いなければ、脆弱な立場に置かれ、アカウントを失いかねない——それはパフォーマンス不良ではなく、アクセス不足が原因である。この状況は、企業ではなく「個人」と関係を築いてしまっていることを示す。営業担当者に自問してほしい、シンプルで強力な問いがある。「もし主要コンタクトが明日その会社を去ったら、自分の関係性やビジネスは危険にさらされるだろうか」
関係性マップは、アカウント拡大という戦略目標を、重要なマインドセットの転換と整合させてくれる。ここでの目標は、1人を満足させ続けることではない。双方が合意した価値提供のために、同盟のネットワークをつくることである。つまり、私たちが注力すべきは関係の維持ではなく、関係の拡張なのだ。
狙いは、既存のコンタクトを「目的地」ではなく「橋」として活用することである。組織全体に紹介を取り付け、複数の視点を会話にもたらす複数のステークホルダーと、どうすれば関係を築けるのか。理想的には、複数の支持者が同席し、私たちが一言も発する前から影響を裏づけ、信頼性を生み出してくれる状態をつくりたい。これは偶然には起きない。長い時間をかけて実行される、意図的な戦略の成果である。その戦略は、関係性のマッピングから始まる。
最終的に私たちは、このマップ(決して完成・完結と見なされない)を用いて、いまは価値を届けられていないが届けられる可能性のある相手は誰か、誰が誰を知っているのか、そしてA地点からB地点へどう到達するのかといった重要な問いを立てる。関係性マップが機能している状態とは、行動、時間配分、カスタマイズされたメッセージングを促し、アカウントに対する明確な戦略目標を支えているときである。どの関係が強固で、どれが修復を要するか、そしてまだ存在しないが築くべき関係がどれかが明確になる。アカウント全体にわたる、より深い価値の対話が可能になる。
強固で、かつ一貫して更新される関係性マップがなければ、チームのデフォルト行動は、すでに(強固に見える)関係がある1人にだけアプローチし、不快な会話を避けることになる。それはプレイブックではない。長期的にはアカウント成長ではなくアカウント縮小を生む、「コンフォートゾーンの維持」にすぎない。



