なぜ垂直統合が戦略なのか
AIビジネスを構築する従来の方法は、ハイパースケーラーからコンピューティングをレンタルするか、エヌビディアからチップを購入して自社のデータセンターに設置するかのいずれかである。どちらもほとんどの企業には有効だ。しかし、スペースXが構築しようとしている規模では、どちらも機能しない。
ハイパースケーラーからレンタルするには、相手に空き容量が必要だが、AWS、Azure、Google Cloudの将来の容量は、Anthropic(アンソロピック)、OpenAI、そして既存の法人顧客向けに大部分が確約されている。エヌビディアから購入するには、エヌビディアにチップの供給余力が必要だが、エヌビディアはTSMCのCoWoS先進パッケージング容量の半分以上を2027年まで予約している。現代のAIを動かすチップは数年先まで割り当てが決まっており、その割り当てスケジュールは早期に予約し前払いした顧客に有利になっている。
3月21日のテラファブ発表会でのマスク自身による問題の説明は率直である。
「我々は既存のサプライチェーン、サムスン、TSMC、マイクロンなどに非常に感謝している。しかし、彼らが快適に拡大できる速度には限界がある。その速度は我々が望むよりもはるかに遅い。そして我々にはチップが必要なので、テラファブを建設する」
これがスペースXのAI戦略全体を3つの文に凝縮したものである。同社は、テスラの車両、オプティマスのロボット、スターリンクの衛星、そして計画中の軌道上データセンター全体にわたって、既存の半導体業界が対応するために拡大する意思を持つ規模を超える需要プロファイルを構築してきた。その戦略的対応は、半導体業界の顧客であることをやめ、半導体製造を直接支配する少数の企業の1つになることである。それがテラファブの正体だ。リスクヘッジではない。本命の一手なのである。
インテルの参画は、この計画を示されたタイムラインで実現可能にする詳細である。インテルは現在、5nm未満のチップを大規模に生産できる世界でわずか3社のメーカーの1つであり、TSMCとサムスンに並ぶ存在だ。その14Aプロセスノードは真に最先端であり、同社のファウンドリ事業は移行を検証するための旗艦顧客を探していた。スペースX、テスラ、xAIの組み合わせは、まさにその顧客を体現している。このパートナーシップにより、テラファブは数十年にわたる製造ノウハウにアクセスでき、インテルは最先端ノードの確約された非常に大きな買い手を得ることになる。
これが他と異なる点
スペースXの計画では、テラファブの生産量の80%が地上ではなく軌道上のデータセンターを動かすことになる。
スペースXはすでにFCCに対し、最大100万基のデータセンター衛星を地球低軌道に打ち上げるライセンスの申請を提出している。物理学的な論拠は強力だ。大気圏外の太陽放射照度は地表の5倍である。真空中での熱放散は、ハードウェアをそれに合わせて設計すれば、より効率的になる。そして、この方程式で最も重要な部分であるスターシップの打ち上げ能力により、質量を軌道に移動させることが史上初めて経済的に実行可能になる。
ここでビジネスの全体像が焦点を結ぶ。ロケットは副次的事業ではない。軌道上AIコンピューティングを可能にするインフラである。衛星も副次的事業ではない。テラファブが製造するために建設されているチップの展開手段である。かつてスペースXの別々の事業に見えていた各ピースは、実は1つの統合システムの構成要素であることが判明する。そしてIPOは、そのシステムの最後のピース、つまりすべてに供給する半導体製造能力に資金を提供するのである。
だからこそS-1はこのような内容になっている。TAMを28兆5000億ドル(約4503兆円)と記述し、設備投資計画に「自社GPUの製造」を含める企業は、驚くべき方向転換をしているのではない。投資家が思っていたロケット企業は、実はずっと以前からより大きな何かに向けて構築されてきたのであり、今がその大きな絵が見える瞬間だと伝えているのである。


