経営・戦略

2026.04.26 02:21

OpenAIがチャット内決済を終了、小売業者にとっては追い風に

stock.adobe.com

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ローレン・ニューマンはButton社のCRO(最高収益責任者)。同社はAIを活用したコマースプラットフォームで、クリエイターおよびアフィリエイトマーケティングのパフォーマンス最適化を手がける。

他社のプラットフォームの内側で何かを構築するということは、常に方針転換ひとつで足場を失いかねないということだ。先月、OpenAIは小売テック業界の多くがひそかに抱いていた疑念を裏づけた。ChatGPT内で購入を完了させることは、構想が示唆していたほどシームレスでは決してなかったのだ。ユーザーの行動パターンと一致しておらず、OpenAIはコマースに深く踏み込む前にそれを見抜いた。OpenAIの公式見解によれば、同社は小売業者とユーザーの実態によりよく合わせるためにコマース戦略を進化させているという。

これが実際に意味するのは、ユーザーはChatGPTで閲覧するが、購入は別の場所で行うということだ。聞き覚えがあるだろうか。これはウェブ全体で見られる標準的な購買行動であり、アトリビューション(貢献度の計測)を困難にする要因でもある。AIは優秀なショッピングアシスタントだった。しかしレジとしては役立たずだった。この違いは極めて重要である。

発見と購入のあいだにあるギャップ

OpenAIがチャット内決済から撤退したことは、AIコマースの終焉を意味するものではない。購買ファネルにおいてAIが実際に存在する位置が成熟してきたことを示している。発見、比較、購買意向。AIが勝っているのはその領域だ。実際、従来型の検索から相当なトラフィックと影響力を奪いつつある。Adobeによれば、米国の小売サイトへのAI経由トラフィックは2025年のホリデーシーズン最初の1カ月で約670%急増した。消費者はChatGPTのようなツールを、決済のためではなく、調査と意思決定のために使っている。購入は別の場所で行われ、ほぼ常にモバイルで、ますますネイティブアプリ内で完結する。これが多くの小売業者に迫りつつあるアトリビューション危機である。

ある買い物客が、トレイル(未舗装路)の路面に最も適したランニングシューズはどれかをChatGPTに尋ねる。ChatGPTは熟慮したパーソナライズ回答を返し、その先へ送り出す。小売業者はクリックを獲得する。だが次に何が起きるのか。そのクリックは、アプリ内の正しい商品ページに着地するのか。アトリビューションは引き継がれるのか。買い物客がiOSかAndroidか、アプリをインストールしているか、リンクが適切に解決されるかまで反映されるのか。ヒント:答えはノーだ。

まさにこのためにディープリンクは作られた

AIアシスタントが商品を推薦するよりずっと前から、モバイルコマースには「配管」の問題があった。パブリッシャー、アフィリエイト、クリエイターが膨大な購買意向を生み出していたが、買い物客を小売業者へ誘導するリンクは脆弱だった。行き先が間違っている。アプリの文脈が欠けている。アトリビューションが壊れる。コミッション(成果報酬)が失われる。ユーザーは離脱し、売上は消えていく。

プラットフォームは、AIを活用したダイナミック・ディープリンク(状況に応じて最適な遷移先を選ぶディープリンク)を用い、すべてのタップが消費者を可能な限り最適な目的地へ導くようにしなければならない。アプリがインストールされている場合はネイティブアプリを、そうでなければモバイルウェブを認識し、環境やデバイスを問わず適切な商品ページへ到達させる必要がある。

ChatGPTが決済を自ら抱え込むのではなく、買い物客を小売業者のアプリへ誘導するのであれば、そのルーティングの引き渡し品質が決定的な変数となる。適切なアトリビューションとシームレスな体験を伴い、正しいアプリ文脈のもとで正しい目的地へ到達するリンクはすべて、獲得された売上である。そうならないリンクはすべて、みすみす逃した売上だ。

引き渡しで起きる「コンテキスト崩壊」こそ真のリスク

ChatGPTは、深くパーソナライズされた会話型のショッピングアドバイザーである。膝の不調に合わせて幅広の「Hoka Speedgoat 6」が適していると告げるとき、汎用的なページへ送っているわけではない。もし小売業者がその買い物客を、汎用的なランニングシューズのカテゴリーページに着地させてしまえば、コンテキストとコンバージョン(成約)確率は瞬時に崩壊する。

これは技術の問題であると同時に戦略の問題でもある。技術面では、商品レベルのデータ、ユーザーの状態、アプリ文脈に基づいて、行き先を賢くルーティングできるソリューションが、AI経由トラフィックの獲得に本気で取り組む小売業者にとっての最低条件(テーブルステークス)になる。戦略面では、小売業者は、AI搭載の検索・推薦エンジンに表示されるプロダクトフィード(商品データのフィード)を、最新で、情報量が多く、最適化された状態に保つ必要がある。

アトリビューション問題は消えない。むしろ大きくなる

AIによる発見と小売のコンバージョンが交差する地点で、測定の危機が静かに進行している。買い物客がChatGPTで商品を見つけ、その後に小売業者のアプリで購入した場合、誰に功績が帰属するのか。AIプラットフォームか。アフィリエイトか。もともと推薦を表出させたクリエイターか。小売業者自身のSEO(検索エンジン最適化)か。

OpenAIが決済から退いたことは、AIが小売に敗れたという話ではない。小売の既存インフラ、信頼されたアプリ、保存された決済手段、ロイヤルティプログラム、リアルタイム在庫といった領域が依然として構造的に優位である場所で、AIが真に価値を加えているということだ。

AIコマースの次の局面で勝つモデルは、おおむね次のようなものになる。AIは発見と推薦を担う。小売業者は取引と関係性を担う。その2層をつなぐ「結合組織」――ダイナミック・ディープリンク、インテリジェントなルーティング、アトリビューション、プロダクトフィードの最適化――を構築する企業が、マージンを握る。

小売業者にとって、いまは傍観している場合ではない。直ちに注力すべきことが3つある。

第1に、ディープリンク基盤を監査せよ。AIプラットフォームが買い物客をあなたのアプリへ誘導するとき、そのリンクはデバイスをまたいで、アプリがインストールされている状態/されていない状態、そしてさまざまなユーザー文脈でも、実際に機能しているのか。

第2に、かつて検索に投資したのと同じくらい積極的に、プロダクトフィードに投資せよ。構造化された商品データ、整備された説明文、正確な価格と在庫状況、豊富な属性情報が、AIシステムにあなたの商品を表示・推薦させる要件である。

第3に、AIコマースのスタック(技術群)におけるあらゆるパートナーに対し、アトリビューションの明確化を求めよ。ChatGPT、Perplexity、あるいはどのAIアシスタントであれ、それが買い物客をあなたのアプリへ誘導したなら、あなたはそれを把握し、最適化するためのデータを持たねばならない。

決済を自ら抱え込むのではなくディープリンクするというOpenAIの判断は、第一印象に反して、小売業界への贈り物である。AIによる発見のレイヤーは成熟し、急速にスケールしている。コンバージョンのレイヤーには、解き放たれるのを待つ数十億ドル規模の潜在収益が眠っている。残る問いは、それを取り込める準備ができている小売業者とテクノロジーパートナーが、どこなのかということだけだ。

forbes.com 原文

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