AI

2026.04.28 11:15

【全文】東大入学式 野田秀樹氏祝辞 | AIは万能の顔、だが「ダ・ヴィンチの喜び」を知らない

撮影:尾関祐治

何故、AIには人間の「心」というものがわからないのでしょう。

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そこで2045年でしたか? AIに人間が超えられると言われている「技術的特異点」の問題があります。SINGULARITYというのだそうですが。そんな難しそうな言葉で言われると、うっかりAIに超えられてしまいそうな気もしますが、大体、AIが人間を超えるって、何の話をしてるんだろうって、私は思います。AI とは、Artificial Intelligence、人工知能ですよね。つまり、AIが人間を凌駕しようとしているのは、あくまでもIntelligence━━知能、人間の脳の部分です。でも、人間は脳みそだけで生きているのではありません。人間には知能以外の身体、肉体があります。けれどもAIには体がない。これこそが、AIの最大の弱点なんです。

このAIには人間の体がない。ここにこそ、道端の記憶を含めたあなた方の6万年分の記憶が、付け入るスキがあるのです。このバトルに勝てるかもしれません。

AIにとって、「肉体」とは、超える超えられない以前の問題です。AIには、「人間」の「肉体」がない。だから、懸命に人型ロボットを作っています。だが果たして人間の肉体に似せることが、ロボットとして効率がいいかといえばそうは思えない。すでにそこに矛盾がある。それぞれの目的に合わせた形のロボットがいいに決まっている。それでもなぜヒト型のロボットを必要とするのか。ここに「人間の肉体」への人間の執着という話が出てくると思うんですね。肉体というものを持っている人間は、かならずしも効率的に生きているように見えない。肉体はたくさんの不便を抱えている。でもそれこそが、人間の人間たるゆえんで、人は人を愛おしく思う。誰にでも起こるその肉体の不便さの最たるものは、人間の「老い」でしょうし、その究極は、肉体を持つ人間は「死ぬ」ということです。AIにとって「死」はどんな意味を持つでしょう。少なくとも、そこに人が感じるような身体を通しての「恐怖」とか身体を通しての「絶望」とか「達観」はない。

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撮影:尾関祐治

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