毎年、何百という消費財ブランドが誕生している。彼らはクリーンラベル(余計な添加物を排したシンプルな原材料表示)や健康への使命感を武器に、投資家の期待を背負って成長を期すが、その多くは数年と持たずに店頭から姿を消していく。
対照的に、成功を収めるブランドには、共通する現代的な成功の方程式がある。ベンチャーキャピタルから資金を調達して急速に事業を拡大し、市場環境が変わる前に大手企業に売却するというものだ。2023年に設立されたサプリメントグミブランド「Grüns」は、その最新かつ象徴的な事例だ。同社はローンチから4年足らずでユニリーバに12億ドル(約1913億円)で買収され、消費財業界の成功ストーリーとして大きな注目を集めた。
しかし、That’s It Nutritionの歩みは大きく異なる。同社は14年前、わずか2種類の原材料と「米国人はもっとフルーツを食べるべき」という創業者の信念のみを拠り所に、農産物直売所の小さなブースからスタートした。そこから着実に成長を遂げ、現在ではフルーツバーやスナックのブランド「That’s It(ザッツイット)を全米展開する企業へと発展している。ホールフーズ、コストコ、ターゲット、スターバックスなどで取り扱われるほか、デルタ航空の機内食にも採用され、年間売上高は1億ドル(約159億円)を超える。
創業者リオール・レウェンシュタイン博士によれば、同社は昨年だけで2億5000万食分のフルーツを消費者に届けたという。同社はベンチャーキャピタルからの資金調達も、早期の事業売却も行わず、創業時からのミッションに一貫して取り組み続けている。Grünsのような成功モデルを誰もが追求する現代においてThat’s It Nutritionは、持続可能な事業を築く道は決して一つではないことを示している。
レウェンシュタイン博士は、同社の歩みを支えてきた経営哲学や意思決定、そして時に大きな代償を伴った教訓を筆者に語ってくれた。その足跡は、現代の消費財業界における定石が、必ずしも万人に当てはまる正解ではないことを浮き彫りにしている。
エグジット戦略ではなく、ミッションを起点とせよ
「私たちのミッションは、より多くの人にフルーツを食べてもらうことだった。会社を立ち上げ、5年後に売却することを目的としていたわけではない」とoレウェンシュタイン博士は語る。
この志こそが、その後のあらゆる経営判断の軸を形づくってきたと彼は強調する。事業売却ではなく、企業の存続を目的に据えたことで、流行への追随や原材料の妥協、あるいは自分たちとは異なる時間軸を持つ投資家に主導権を委ねるといった誘惑に流されることがなかったのだという。
That’s It Nutritionは、創業から約10年後に少額の外部資金を調達したことを除き、自己資金で事業を運営し、得られた収益を継続的に再投資してきた。
「白髪はかなり増えた」とレウェンシュタイン博士は、その決断に伴う代償を率直に認める。しかし、それによって守り抜いた独立性は、何ものにも代えがたいものだという。投資家の意向次第で戦略が二転三転し、翻弄されるブランドを彼は数多く目にしてきた。そうした不安定さは、真に価値あるものを築く上で相容れないものだ。歩みは遅くとも、長期的な成長に必要な基盤作りに集中できる自由は、困難な選択に伴う負担をはるかに上回る価値があったという。



