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2026.04.30 13:00

原材料は果物だけ スタバも認めたスナック界の異端児ザッツイット、売上160億円を実現した逆張り戦略

AkuAku - stock.adobe.com

小さな改良よりも破壊的革新を

レウェンシュタイン博士は、自社が置かれている市場環境の厳しさを率直に認めている。小売店の棚スペースは限られており、その多くは大手メーカーによって占められている。大手小売のバイヤーがThat’s It Nutritionのブランドに割く時間は、年間でわずか15分程度に過ぎないという。そのような環境下では、既存製品をわずかに改良した程度では、成功の可能性はほとんどない。

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「今の時代、破壊的であればあるほど存在感を示すことができる。既に棚に並んでいるものを少し作り変えただけの製品では勝ち目はない」と彼は語る。

これまで、スナックバー市場はプロテインバーで溢れていたが、That’s It Nutritionは2種類のフルーツだけで作られたバーという、根本的に異なる製品で参入した。レウェンシュタイン博士によれば、同社は既存ブランドから顧客を奪ったのではなく、むしろ新たな購買層を取り込んだのだという。競合からシェアを奪うのではなく、カテゴリーの市場規模を拡大したことこそが、バイヤーにとって同ブランドが市場に存在する理由となり、今日に至るまで同社を守り続けてきた。画一的な製品が溢れる市場において、新規性は単なるマーケティング上の優位性にとどまらず、生き残るための戦略そのものだと彼は語る。

トレンドに流されない選択

レウェンシュタイン博士は14年以上にわたり、チアシードやコラーゲン、そして最近ではプロテインといった自然食品業界におけるトレンドの移り変わりを目の当たりにしてきた。同社のバーにプロテインを加えるべきという要望も強く、「過去14年間、その声は絶え間なく寄せられていた」と彼は振り返る。

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しかし、それを採用することはなかった。理由は明快で、このカテゴリーにおける既存製品の99%には既にプロテインが添加されていたからだ。追随すれば、That’s It Nutritionが市場の中で埋没し、製品を際立たせていた明確な独自性は失われるとことになる。一方で、フルーツはあらゆる文化や食生活において普遍的な存在であり、「決して時代遅れになることはない」とレウェンシュタイン博士は語る。

同社は最近、食物繊維を含む製品をローンチしたが、それは食物繊維がトレンドとなっていたためではなく、米国人の約95%が食物繊維不足に陥っているという課題を解決するためだったと彼は主張する。

サプライチェーンを自社で管理

That’s It Nutritionはフルーツを農家から直接調達しており、作物に応じて18~24ヵ月先まで事前に契約を結び、自社独自の仕様で栽培を行っている。「製品の原材料が2種類しかない場合、それらの品質こそが全てなのだ」とレウェンシュタイン博士は言う。

直接取引を行うことで、同社は原材料コストの抑制にとどまらず、品質基準や生産者との信頼関係、そして事業拡大に必要な柔軟性をも自らコントロールしている。

この考え方は、製造パートナーの選定においても一貫している。同社は早い段階で、自社を数ある取引先の一つとしか見ないパートナーと、自社の成長に本気でコミットするパートナーとの間に決定的な差があることを見抜いた。そして後者へと意識的に軸足を移したのである。その判断は大きな成果をもたらした。

スターバックスから、2週間で100万個を納品するという注文が入った際、That’s It Nutritionは製造パートナーの協力を得て対応することができた。このプロモーションは約1年にわたり継続し、スターバックスは同社の基盤を支える重要な顧客となった。こうした成果は、製造パートナーとの短期的な取引にとどまらない、強固な協力関係を築いてきたことの賜物だとレウェンシュタイン博士は語る。 

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編集=朝香実

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