経済

2026.05.22 14:15

和歌山市の漁師町の挑戦 ポテンシャル止まりで終わらせない~後編~

雑賀崎・田野の街並み 写真=山口真一

雑賀崎・田野の街並み 写真=山口真一

2026年1月29日、東京都港区の港区立産業振興センターで「わかやま潮騒サミット」が開催された。本サミットは、2025年に始動した和歌山市・雑賀崎、田野地区の再生プロジェクトの一環であり、観光を軸に地域の未来を描く取り組みだ。各界の専門家が有識者として参加し、その構想を広く共有しながら、共に実現を担う仲間を広げることを目的としている。

「Forbes JAPAN」編集長の藤吉雅春は、本サミットを「公開編集会議」と位置付けて、前半では識者が現地視察を通じて発見した雑賀崎、田野地区の魅力を紹介してもらいながら、事業を起こす起点と、そこに至る考え方について、これまでの経験を話してもらった。出てきたキーワードは「妄想」。この妄想をもとに、よそ者が地域に住む人たちとどのような関係をつくっていくか、いかに巻き込んでいくかという「共創」についても識者の経験に基づく考えが披露され、雑賀崎・田野の未来に思いを馳せた。

後編では、前半で披露された雑賀崎、田野地区で事業をはじめるとしたら、どんな事業を行うのかという「妄想」を現実的に行う上で、実現を阻む課題や障がいについて、専門的な知識を持つ識者のアドバイスを受けながら、課題克服の方法や環境整備、新たな街づくりへの道筋について語りあっていく。


街づくりを阻む「廃墟」と「2次交通」

前半で見えてきた「はた売り」や「食文化」といった雑賀崎、田野地区にもともとある魅力を、街づくりに生かしていくことが、目的とする「静かな日常が、心を動かすまち」を実現する上でも重要であろうという意見にまとまった。

SBI地方創生クリエイターズ代表取締役社長(前・羽田未来総合研究所 代表取締役社長執行役員)の大西 洋は「食はキラーコンテンツですからね。ただ、マーケットを考えると、やっぱり外から来てもらうことが重要。そうなると廃墟となったホテルなど、景観を考えなければいけない」と、後編は、街づくりを阻む課題提起から始まった。

廃墟は“景観”と“経済”の問題でもある

このエリア周辺にはに廃墟となったホテルは4棟ある。ご存じのように廃墟はここだけではなく、全国の温泉街をはじめ、多くの地域が抱える。この問題に対して識者の一人であり、元内閣府地方創生推進事務局長で三井住友信託銀行顧問の市川篤志は、「存在するだけで地域全体の雰囲気が悪くなるのですが、撤去するにしても、活用するにしても巨額の費用がかかります。しかも所有者の問題や税金を個人の資産に投入しないという原則もあり、長年、手付かずになっていました。

2026年1月29日、東京都港区の港区立産業振興センターで「わかやま潮騒サミット」
2026年1月29日、東京都港区の港区立産業振興センターで「わかやま潮騒サミット」 写真=加藤史人
三井住友信託銀行顧問 市川篤志
三井住友信託銀行顧問 市川篤志

ただ、経済活動を阻害する公共の問題でもあることから、2026年度から観光庁が廃墟ホテルのようなものでも解体できる補助制度の運用が開始される予定です」と、整備されつつある制度を活用することを勧める。ただ、補助金を得るには単に壊すという理由ではダメで、跡地をいかに活用するのか、将来像を示す観光再生計画があることが必須になるため、これからの事業でも周辺地域の活用、景観の問題などを入れ込んだ事業が必要になるだろう、と言う考えを示した。

廃墟化し、今も残る旅館
廃墟化し、今も残る旅館
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文=古賀寛明 編集=川上みなみ 写真=加藤史人

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