経済

2026.05.22 14:15

和歌山市の漁師町の挑戦 ポテンシャル止まりで終わらせない~後編~

雑賀崎・田野の街並み 写真=山口真一

 大阪から1時間が「西の熱海」となるか

交通手段を横断した仕組みができれば、例えば、和歌山市街地からバスやタクシーで訪れ、域内はレンタサイクルや電動キックスケーターなどが活躍するのではないだろうか。狭い路地の港町も走れ、傾斜がきつい場所であっても電動アシスト付であるためラクに移動できるため、少し離れた店舗や名所をうまくつなぐことが可能になる。ただ、そうなるとよりコーディネーターの存在が浮き彫りになる。

advertisement

例えば、シェアサイクルでは監督官庁は国土交通省だが、走行ルールの整備は警察庁、自転車活用推進法に基づく施策は内閣府など、日本は縦割りが強く、所管分断が障壁。その実現には困難が伴う。市川は官僚出身であるだけに、「日本社会は縦、縦と縦割りで来たため、その横串を通すことが何より大事」と、県や和歌山市など行政に期待するが、冨山氏は「本来ならば、それはDMOがコーディネーションすべき問題」という。だが、「日本のDMOが海外に比べ中途半端であるため、DMOの権限強化も解決したい問題」と、新たな課題も浮かび上がった。

街と事業者と事業者同士をつなぐ存在

コーディネーターの重要性は、旅の変化によっても起こってきた。これまでは、巨大な温泉ホテルを頭に浮かべてもらえるとわかりやすいが、昭和の高度成長期に出来たホテルの送迎バスが駅まで迎えに行き、食事や、その後の2次会もホテル内で完結。地域との関係性が無くても成立するモデルだった。

しかし、そのモデルが崩れ(そのために巨大な宴会場を持つようなホテルが廃墟になっている)、今ではStaple代表取締役の岡雄大が手掛ける瀬戸田のように高級旅館であっても風呂や食堂は街の中に出ていく、泊食分離のホテルも増えて、街に開かれたモデルになっている。雑賀崎、田野も観光産業を街づくりに生かすのが目的なので、当然ながら、この街に開かれたモデルでなければならない。

advertisement

「結局、街づくりって、1個、1個の単位で完結するビジネスモデルじゃないんですよ。いろんなものが全体としてコーディネーションされて初めて魅力的な街になるから」と冨山が言うとおり、事業者の妄想を届けるためにも、街と事業者、事業者同士をつなぐためにもコーディネーターをどう考えるのかは、今後の重要な課題だろう。

街に開かれた事業であるべき理由として山中は人手不足も理由に挙げる。

「繋がりや営みから、いい体験価値が生まれると思うが、地域の抱える人手不足を考えると難しい。だから、泊食分離のように、一事業者が儲けるのではなく、地域全体が、どうやって儲けていくのかという考え方をしていかないと、維持もできないし、質の高い体験価値も提供できないと思う」と述べる。

次ページ > ポテンシャルはある。その先にある“実装”とは

文=古賀寛明 編集=川上みなみ 写真=加藤史人

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事