宇宙経済
さらに、軍事的な懸念よりもはるかに重要なことが起こりつつある。1960年代には考慮の対象にすらならなかったこと、すなわち、宇宙の商業化だ。
1969年には、宇宙経済は存在していなかった。今日、衛星の打ち上げから地球の観測、宇宙ベースのインターネットに至るまで、宇宙経済の市場規模は6000億ドル(約95兆2000億円)を超える。この数字は10年以内に1兆ドル1兆ドル(約159兆円)を超えるまでに増大すると見込まれている。急成長する経済フロンティアを目の前にしたアルテミス計画の目的は、単に探査だけではなく、真の宇宙航行種になりつつある人類のインフラのためでもある。
これはまさに始まったばかりであり、成功すれば、これこそが想像もつかないような形で人類の未来を変えていくものとなる。
人類が深い外洋を定期的に航海できるようになったのは、約1000年前にポリネシア人が外洋航海術を初めて使いこなすようになってからのことだ。その後、欧州人が科学革命の成果を利用したことによって大洋横断航海が当たり前になり、その過程で人類社会の本質が再構成された。
100年後、人類は宇宙に永続的な入植地を設ける
人類はまさに今、分岐点に立っている。1910年、飛行機に乗ったことがある人はごくわずかだった。当時はまだ斬新で稀な経験だった。それからわずか4世代(100年)後には、地上約8000m上空を時速約800kmで飛行するのが、誰も気に留めないほどごく普通のことになった。
これと同じ変化を宇宙に対して促すことにおいて、アルテミス2は小さいが重要な一歩となった。今から100年後、月面や火星そして軌道上に永続的な入植地を設けることは十分にあり得る。200年後(蒸気機関車の発明と同じ間隔)には、数百万もしくは数億もの人々が太陽系全域で生活し、働いているかもしれない。この最先端の開拓領域(ハイフロンティア)の可能性こそが、たとえそれがぼんやりと感じられるだけだとしても、アルテミス2ミッションにこれほど大きな関心が寄せられた理由を説明するものだ。
中東で最悪の事態が展開するのを目の当たりにしていた最中に、アルテミスは人類がなり得る最善の姿を示した。無私の勇敢さを持つアルテミス2の宇宙飛行士は人類の代表となり、今もなお存在し得ることを切に知る必要のある希望と可能性の未来を視察してきたのだ。われわれがこの希望を胸に抱いて共に根気強く尽力すると何ができるかを、今回のミッションの成功が完璧に実証した。アルテミス2の真の意義は、これだった。


