「ブランドってなんだろう、ブランドとはいったい何でできているのだろう」。
長年コーポレートブランディングとエグゼクティブ・プレゼンスにに携わってきた筆者だが、友人の採用面接のエピソードを聞いて、改めて考える機会があった。
面接は、企業が候補者を評価する場だと思われている。しかし同時に、候補者もまた会社を見ている。その数十分のやり取りが、ブランドの本質を露わにすることがある。
先日、あるプレミアムブランドの二次面接に行った友人から、メッセージが届いた。彼女はグローバル企業のファイナンス分野で長いキャリアを持ち、語学も堪能で完全なバイリンガル人材だ。
「面接で会ったディレクターが、今までに会ったことのないタイプの驚くような人でした。会って自己紹介することなく3秒でダメ出しを始め、それが30分続いたんです。人を見下して威張って。雇いたくないのなら面接しないでほしかった」
例えば、他に応募している会社について聞かれた時。友人はインテリア企業の名前を挙げたところ、ディレクターから「インテリアが好きならどんなブランドを使っている?」と質問があった。そこで正直にIKEA、ACTUS、The Conran Shop、BoConcept、ZARA Homeと、生活の中で実際に使っているブランドを、そのまま並べた。
すると返ってきたのは次の言葉だった。
「インテリアが好きなのにIKEAって言う? そういう人っているんだよね。ハイブランドは? そういうとこだよ? わかる!?」と。
この話を聞きながら、筆者は「ブランドってなんだろう」とも考えた。
経営者が見落としている「人」のリスク
この採用面接のエピソードを、採用現場の一幕として片付けてはならない。これは企業ブランディングと経営におけるリスクの話だ。
ホームページは整えられる。ブランドムービーも作れる。広告もSNSも磨き上げることができる。しかし、実際にその会社の人間が目の前に現れたときはどうだろうか。その人がどう話し、どう問い、どう相手を扱うか。その瞬間の方が、ブランドの正体をはるかに露骨に表すことがある。どれほど多額の広告費を投じても、現場の一人の振る舞いが一瞬でそれを無効にすることがある。
友人の事例の場合、面接をしたディレクターがそのブランドの顔であり、代弁者になる。このディレクターをその場に立たせたのは、組織であり、経営の判断だ。現場の振る舞いは、ブランドの姿そのものであり経営の意思の反映である。



