3万5000ドル(約560万円)。
これは、米国防総省が新たに導入した「低コスト無人戦闘攻撃システム」、略して「LUCAS(ルーカス)」の価格である。LUCASは今年、イランとの武力紛争で実戦デビューを果たした。そのイランの自爆ドローン(無人機)「シャヘド」の設計をリバースエンジニアリング(分解・解析)して開発されたLUCASは、自律性を備え、長い航続距離を誇り、スウォーム(群れ)攻撃にも対応する。それでいて、価格は中型のピックアップトラック程度にすぎないのだ。
比較してみよう。トマホーク巡航ミサイルは1発あたり250万ドル(約4億円)ほどする。パトリオット迎撃ミサイルはと言えば、1発およそ400万ドル(約6億4000万円)だ。
常連の読者はご存じのとおり、筆者はかねて政府の政策は変化の先触れになると考えてきた。現在、まさにその政策と地政学、そしてテクノロジーが、数十年にわたり資本市場に身を置く筆者もかつて見たことがなかったような形で一点に結び合いつつある。
いま起こりつつあるのは、AI(人工知能)と自律性を基盤とする新たな防衛産業革命である。
1.5兆ドルの国防予算
まず最初にマクロな話をしたい。というのも、その数字が途方もないものだからだ。ドナルド・トランプ米大統領が提示した2027年度予算案では、1兆5000億ドル(約240兆円)という巨額の国防費が要求されている。これは米国の国防費としては現代史上、群を抜いて最大になるものだ。国防総省向けに1兆1000億ドル(約176兆円)が計上されているほか、枯渇する懸念のある不可欠な弾薬の確保や、米国の防衛産業基盤の再建のために3500億ドル(約56兆円)が割り当てられている。
1兆5000億ドルにのぼるこの国防予算案のなかに、とくに筆者の関心をそそる項目がある。134億ドル(約2兆1400億円)が計上されている「自律性・自律システム」だ。これは、ドローンをはじめとする無人システムや、それを支えるAIデータセンターを指している。
この予算配分は、戦争の性質が根本的に変わったこと、そして、最も賢く安価で大量の兵器を持つ側が優位に立つことを、国防総省が認めたことを物語っているように思われる。



