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2026.05.17 15:00

AIが解決できない教育の壁、グーグル幹部が語る「動機」の重要性

Bumble Dee - stock.adobe.com

離職をめぐる論点

もちろん、AIと教育をめぐるあらゆる会話の上には1つの恐れが漂う。節約された時間が、単に別の仕事で埋まるのではないかという不安だ。教師はこのパターンを以前にも見ている。同僚が辞めても補充されず、残った者たちに仕事が割り振られる。AIはそのサイクルを加速させるだけなのだろうか。

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論点の重大さは、ゴメスの中心的主張と直結している。教育の本当の課題が人間の動機づけであり、その動機を点火するのがツールではなく教師だとすれば、教師を失うことは最悪の結末である。燃え尽きる教師が1人増えるたびに、生徒を「開花」させ得た人が1人減る。

ゴメスはこれを、定着(リテンション)の観点から捉え直す。「世界全体で、およそ4400万人の教師が不足する見通しがある」と彼は言う。「教師という職業が、多くの教師が本来そうであってほしいと願って入ってくる姿に近づく必要がある。つまり、幼い子どもや若者の人生を本当に形づくれるということだ。だが、実際に入ってみると、その多くはそうではない」

Googleの北アイルランド調査は、教師が週末を取り戻せるほどの時間を節約したことを示した。ゴメスにとってそれは効率性の物語ではない。職業として生き残るための物語である。

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「毎日遅くまで働き、週末も働かなければならない職業なら、燃え尽きや離職に至っても不思議ではない」と彼は言う。彼の望みは、管理者が離職率の低下を目にしたとき、教師が取り戻した時間を、彼らがこの職業に入った目的のために使う価値を認識することだ。そして、ゴメス自身が認めるようにAIにはできないこと、すなわち生徒が学びたくなる関係性を築くことのために、その時間が使われることだ。

チョークの粉じんとアルゴリズム

ベン・ゴメスの母親は、チョークの粉じんのせいで教職にとどまれなかった。いまの教師が離れていく理由は別だ。燃え尽き、事務負担、仕事が本来の姿ではなくなったという感覚。障壁は異なるが、損失は同じである。

ゴメスがキャリアをかけて築いたテクノロジーは、そうした障壁の一部を取り除ける。時間を節約し、リアルタイムで言語を翻訳し、カリキュラムをポッドキャストに変え、まばたきでコミュニケーションする生徒のために特別支援教育の教師が音楽アプリをつくることも可能にする。

しかし、それでもできないことがある。生徒に「自分は大切な存在だ」と感じさせることだ。そこは人の仕事として残り続ける、とゴメスは言い切る。

「すべては、『なぜ学びたいのか』という一次的な関係性を通じて機能しなければならない」と彼は言う。「そこに教師が入ってくる。母が入ってきた場所でもある」

forbes.com 原文

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