食&酒

2026.04.25 15:15

NHK「ドキュメント72時間」で取り上げられた中華フードコート「友諠食府」はこんな店

4月17日に放送されたNHKの「ドキュメント72時間」という番組で取り上げられた東京・池袋の中華フードコート「友諠食府」

ガチ中華の大きな2つの特徴

これらの中華フードコートは、その後、テレビや新聞、雑誌で何度も紹介されたことから、池袋でも珍しく日本人客も多い。若い女性のグループや会社の仲間、旅好きの夫婦など、さまざまな年代の日本人客が来店し、ガチ中華を気軽にエンタメ的に楽しむ光景が見られる。

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こうした現地感こそ、ガチ中華の新しさと言っていいだろう。それは先に述べたように、横浜の中華街のような長い歴史を通じて形成され観光地化した、いわば演出された空間とは違い、中国やアジアの人たちの日常や暮らしがそのまま垣間見られる「日本の中の中国」なのである。

さらに言えば、その出現は、日本社会がすでに新しい時代を迎えていることを静かに伝えてくれる。現在、東京をはじめ日本の大都市圏には、ガチ中華のような中国語圏発の特色ある食のシーンが次々に持ち込まれ、誰でも気軽に体験できるようになっている。

池袋のガチ中華「ムーさんの蒸鍋館」では、上海で流行した蒸気の強力なパワーでつくる「蒸気石鍋」料理が供されている
池袋のガチ中華「ムーさんの蒸鍋館」では、上海で流行した蒸気の強力なパワーでつくる「蒸気石鍋」料理が供されている

それは料理に限らず、店舗の内装デザインのようなビジュアルの面白さや、先進的で手の込んだサービスの提供など、これまで十分に知られていなかった「新しい中国」の実像が日本社会に姿を見せつつあると言ってもいい。

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すでに何度もこのコラムでも述べたことだが、ガチ中華の特徴は大きく2つある。

まず「中国および中国語圏の最新の食のトレンドが提供されていること」。そして「これまで日本で知られていなかった特色ある地方料理が増えていること」だ。

こうした料理を供する店が出現し始めたのは、2010年代後半のことで、ひとつのメルクマールとなったのは、2015年9月に中国最大の火鍋チェーン「海底撈火鍋(かいていろうひなべ)」が池袋にオープンしたことだった。

「海底撈火鍋」は味だけでなく、至れり尽くせりのサービスが売りで、世界各国に展開している
「海底撈火鍋」は味だけでなく、至れり尽くせりのサービスが売りで、世界各国に展開している

その頃から池袋西口周辺へのガチ中華の集中的な出店が始まったのである。

なぜ池袋にこのような中国系の飲食店が増えたかという背景については、すでに「『ガチ中華』の店が東京・池袋に集中している理由とは?」というコラムで書いているので、そちらをお読みいただきたい。

今回、前述したNHKの番組が放映されて感慨深いのは、いまにして思えば、この中華フードコートこそ、ガチ中華の出現という現象をわかりやすく「見える化」し、世に知らしめる1つの発火点だったとあらためて再認識したことだ。

筆者が案内する「池袋<ガチ中華>街歩きツアー」。2026年も実施の予定
筆者が案内する「池袋<ガチ中華>街歩きツアー」。2026年も実施の予定

そして、この中華フードコートのある池袋西口界隈にも、驚くほどたくさんのガチ中華の店がある。かつて「17の地域の料理を知ることができる「池袋『ガチ中華』街歩きツアー」」というコラムで書いたように、筆者はTDCを運営するようになって以降、何度か池袋にあるガチ中華を案内する街歩きツアーを実施してきた。

中国語の簡体字で埋め尽くされた手書きのメニューはガチ中華の店ではよく見られる光景
中国語の簡体字で埋め尽くされた手書きのメニューはガチ中華の店ではよく見られる光景

こうした世界に関心をお持ちの方には、筆者の新刊『ガチ中華移民―日本で増殖する「本格中華料理」の謎』(太田出版刊)をおすすめしたい。いつ頃、なぜ、どのようにして、友諠食府のような、観光地ではなくリアルな「日本の中の中国」が出現するに至ったのか、その経緯をこの本で著しているからである。

文=中村正人 写真=東京ディープチャイナ研究会(TDC)

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