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2026.04.24 10:30

AIエージェント時代に適合したAdobeの新マーケティングプラットフォーム、顧客体験基盤をオープン化

Adobeのシャンタヌ・ナラヤンCEO

この機能にはもう一つの顔がある。ブランドに関する組織の判断そのものをデータ化している点だ。ブランディングの調整と、その結果生まれたコンテンツのパフォーマンスが紐づけられるため、「メッセージトーンの変更がブランド知覚にどう影響するか」「新しいコンセプトのクリエイティブがロイヤリティ指標をどれだけ押し上げるか」──そうした情報が実データで蓄積される。新しい調整を行う際に、どのような結果が出るのかを予測できるようになる。

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ブランド知覚、顧客ロイヤリティ、プレミア価格への納得感──従来、こうした指標は「定性的なもの」として経営会議の数字の議論から外されてきた。四半期決算の俎上に載せにくく、マーケティングが裁量費用扱いを脱しきれない原因の一つでもあった。AIがこの中間領域を連続的に測定・最適化可能な変数に変える。ブランドという暗黙知が、組織のスケールに耐える運用可能な経営資産になる──これがBrand Intelligenceの射程である。

問われるAIツールの使い途

ここまで見てきたように、Adobe CX Enterpriseは顧客との関係を可視化し、経営判断の材料として蓄積し、ノウハウに繋げるためのプラットフォームである。データ、コンテンツ、ブランディング、カスタマージャーニー、AIエージェント──これらを統合し、外部のフロンティアAIとも連携する。DICK’SやP&Gのマーケティング改革を、このプラットフォームが支えている。

しかし、AI導入と経営の再定義は、まったく別の経営課題である。

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DICK’Sがアスリートの伴走者となれたのは、顧客データをAIで分析したからではない。「顧客をアスリートと呼び直す」という経営判断が先にあって、組織の骨格を組み直し、そのうえでAIを現場に降ろしたから、初めて機能した。順番を間違えれば、どれほど高度なAIを導入しても、「顧客属性を細かく分類できる、少し賢いマーケティングツール」にしかならない。

DICK’Sは販売サイトに会話型AIを組み込み、アスリートと伴走しながら得た情報を活用して、会話の中で適切な助言を送り、最適な用具へと導く仕組みを構築している。もはや販売サイトというより、販売機能を持つアドバイザーであり、コーチと呼べる存在だ。ここにたどり着くまでには、顧客を「カスタマー」から「アスリート」へ呼び直す決断、CMOとCTOを同じKPIの下に組み直す人事、そして体験型店舗という物理的な投資があった。AIはそれらの先にしかない。

あなたの会社のCMOとCTO(あるいはCIO)は、今日、同じ顧客について同じ言葉で語れているか。あなたの会社は顧客を何と呼んでいるか。ブランドは今も経営会議で「定性的な話」として片付けられていないか。

DICK’Sが成し遂げたAIによるマーケティング変革を「米国の先進企業の特殊事例」と片付けるか、「いずれは自分たちの業界にもやってくる問題」として受け止めるのか。AIツールの導入は、カタログを見て予算を付ければ済む。しかし「顧客をどう見るかを決め直す」経営判断は、誰も代行してくれない。

AdobeがAI時代に再構築したデジタルマーケティング基盤の意味をどう読み解くのか。AI活用などまだ遠い日の未来と考えているならば、今すぐに動き始めるべきだろう。

編集=安井克至

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