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2026.04.24 10:30

AIエージェント時代に適合したAdobeの新マーケティングプラットフォーム、顧客体験基盤をオープン化

Adobeのシャンタヌ・ナラヤンCEO

企業が顧客一人ひとりに最適化された体験を提供したいと思っても、小さなセレクトショップならまだしも、大企業のブランドコントロールの中で同じことを行うのは不可能だった。組織が大きくなるほど、ブランドの一貫性を保ちながら個別化コンテンツを大量配信することは現実的ではなくなる。

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AIが、この不可能に手をかけ始めている。マスをターゲットとする大企業のマーケティングにおいても、消費者ひとり一人に寄り添うことが可能になりつつある。

P&Gのシャイレッシュ・ジェジュリカーCEOは基調講演で、次のように話した。「ブランドマネージャー時代は年に1本か2本の広告を作り、それを2〜3年は使っていた。しかし今は年に数百本のコンテンツを作らねばならない。ブランドボイスの使い分け、消費者やエキスパートの声にも合わせながら、それぞれに適したコンテンツにする必要がある」

188年の歴史を持ち、65以上のブランドを抱える世界最大級の消費財メーカーが、制作の規模を二桁増やしているという。もはや人力で管理できる領域ではない。

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AIの支援なしには、マーケティングにおけるクリエイティブが成立しない領域へ、巨大企業はすでに足を踏み入れている。いずれ多くの企業が同じ状況に吸い寄せられていくだろう。

ラスベガスで開かれたAdobe Summit 2026
ラスベガスで開かれたAdobe Summit 2026

アスリートの伴走者を目指したスポーツショップ

AIによるマーケティングのトレンドを象徴する事例が、DICK’Sの業態転換である。

冒頭で触れたように、DICK’Sは顧客を「アスリート」と呼ぶ。高校のクォーターバック、バレエを習い始めた少女、週末にランニングをする会社員──年齢や競技レベルを問わず、スポーツに関わるすべての人を「アスリート」として扱う。店頭でのお世辞を込めた言い換えではなく、組織全体で「店を訪れる顧客とは何者か」を再定義した結果である。

DICK’Sは「House of Sport」という体験型大型店舗を全米で展開している。店内にはゴルフシミュレーター、バッティングケージ、クライミングウォール、屋外には芝生のトレーニングエリアまで揃える。

誕生日会を主催し、夏のキャンプを運営し、地域の高校チームのプログラムを支援するなど、地域のスポーツ愛好家とのコミュニケーションの場でもある。コーチングサービスも始めており、ゴルフを始めたばかりの顧客にはクラブを販売するだけでなく、上達のためのレッスン、練習場の提供、上達段階に応じた上位モデルの試打、大会参加の案内まで、一連の流れとして提供する。

単に店で買い物をする存在ではなく、アスリートとして成長していく旅路を案内する伴走者──これがDICK’Sが自社に与えた役割だ。小売業にとどまらず、スポーツ愛好家が真のアスリートに成長することを支える存在となることで、販売店としてのロイヤリティを高めている。

この考え方は、百貨店、専門店、消費財メーカー、金融機関、自動車ディーラー──あらゆるB2C業種にも通じる。商品を並べるだけでは差別化できない。体験と関係性で差別化するしかない、と多くの経営者は気づいているが、どう変えればよいのかが見えにくい。

理由は明快で、顧客がどのような購買体験をしているのか、その文脈を的確に、そして継続的に捉える方法を持っていないからだ。

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編集=安井克至

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