テクノロジー

2026.04.28 12:00

才能だけでは生き残れない。新時代のクリエイターに求められる「AIをまとめあげる力」とは

stock.adobe.com

stock.adobe.com

さまざまな事業に取り組む企業にとってイノベーションは、ライバルが多く競争が激しい分野で、確実に抜きん出た存在になる方法の一つだ。では、クリエイティブ系の職種の場合はどうだろうか? 創造的なアウトプットが世にあふれ、人のアテンション(注意)がますます希少化する今の時代において、抜きん出た存在になるには、単に才能だけでなく、それをどう活用するかが重要になってくる。

advertisement

クリエイティブ産業は、2030年までに全世界のGDP(国内総生産)の10%に達しようという勢いだ。それにもかかわらず多くの分野で、クリエイティブ系の職種に就く人たちは生計を維持できる仕事を見つけたり、自身の技能をキャリアに転換したりするのに苦労しているのが現状だ。

クリエイティブ系のプロフェッショナルの中でも、イノベーションは、単にプロジェクトに参加するだけの人と、場を取り仕切る能力を持つ人とを分ける、決定的な力になりつつある。これは、AI(人工知能)や高度なデジタルツールが急激に台頭するなかで、特に顕著になっている傾向だ。

デザイナーやライター、マーケター、ミュージシャン、さらには映画監督まで、最大級の成功をつかんでいるクリエイティブ系の人たちの問題意識は、もはや「新たなテクノロジーを取り入れるべきか否か?」という点にはない。彼らはむしろ、「自分のワークフローに、これらのテクノロジーをどれだけ迅速に組み込み、新たなレベルの独創性や効率性、影響力を手にするか?」という点に着目している。これがかなえば、抜きん出た存在になり、熱心なオーディエンスを獲得する可能性が高まる。

advertisement

芸術におけるイノベーションの役割

少し視野を広げてみれば、芸術の歴史は、すなわちイノベーションの歴史だったことはすぐにわかるはずだ。歴史に名を残す芸術家の多くは、まさに唯一無二の方法で新たな道を切り開いたゆえに、その地位を手にしている。

例えばレオナルド・ダ・ヴィンチは、自身が持つ科学的知識を芸術に取り込み、よりリアルな画風を確立した。パブロ・ピカソはキュビズムで、伝統的な芸術観に反旗を翻した。文学の世界でも、ジェイムズ・ジョイスは、人の絶え間なくうつろう思考をそのままにつづる「意識の流れ」と呼ばれる手法をいち早く採用した。一方、メアリー・シェリーは小説『フランケンシュタイン』を通じて、SFというジャンルの創始者として認められている。

カービー財団による『フランケンシュタイン』の分析記事には、以下のような記載がある。「『フランケンシュタイン』以前、文学は主に恋愛、怪奇、冒険物語が占めていた。しかしシェリーの作品は、このような伝統的な規範からの脱却を象徴するものだった。彼女は、当時の科学的知識に根差した物語を創出することで、大胆に未知の分野へと踏み出した。それによって、人間の理解が及ぶ範囲を押し広げ、さらには、人類の未来に関わる問いを投げかけた。次第に多くの人に読まれるようになったこの小説は、後代の作家に、自らの作品によって科学や技術に関するテーマを探求することを促す先例となった」

クリエイティブな分野におけるイノベーションは、往々にして、すでに確立され、特定の芸術分野で広く受け入れられているパターンや構造に対してあらがうことを意味する。メアリー・シェリーが、科学と怪奇小説を結びつける手法を考えつかなかったら、文学は今、どんな姿だったかを想像してみるといい。芸術分野のイノベーターは、全く新しいジャンルや運動を作り出し、多くの場合はこれが、あとに続く芸術家にとって表現の舞台となっていく。

飽和した市場では、こうしたレベルのイノベーションが、特に大きな影響力を及ぼす。他人の作品をまねただけのものと比べて、心に残る際立ったスタイルを生み出し、オーディエンスの共感を呼ぶからだ。

次ページ > テクノロジーと創造性の融合がもたらす差別化

翻訳=長谷睦/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事