ジェイ・Zやセリーナ・ウィリアムズの出資を受けるコーヒーチェーンのユニコーン、Kopi Kenangan(コピ・ケナンガン)は、アジア太平洋地域で巨額投資を伴う拡大計画を進めている。同社を率いるエドワード・ティルタナタ(37)は、2030年までに店舗数を現在の3倍超にあたる4000店へ増やす考えだ。
スタバを上回ったKopi Kenanganが、店舗3倍超の4000店構想を描く
2月の蒸し暑い午後、ジャカルタ郊外のアラム・ステラ・モールにあるKopi Kenanganのカフェは、多くの客で賑わっていた。最も売れ筋のメニューは、インドネシア産のロブスタ豆とアラビカ豆にミルクやクリーム、地元のヤシ糖「グラ・アレン」を加えた「Kopi Kenangan Mantan」だ。列に並んでいたマーケティング専攻の学生、エルソン・ロチリー(23)は、手頃な価格で多様なプレミアムコーヒーを楽しめるのがうれしいと話した。
2017年にジャカルタで最初のテイクアウト専門店を開いたKopi Kenanganの共同創業者兼CEOのエドワード・ティルタナタは、当時からロチリーのような顧客を狙っていた。こうした若者は、屋台の安価なインスタントコーヒーでは物足りない一方で、スターバックスやダンキン・ドーナツのような海外チェーンに2倍以上の価格を払う気もない。
ティルタナタの戦略は功を奏した。2021年のシリーズCラウンドで9600万ドル(約151億円。1ドル=157円換算)を調達したKopi Kenanganは、ユニコーン企業となった。同社はその2年後、小売店舗網でスターバックスのインドネシア法人を上回った。Kopi Kenanganは現在、国内市場の3分の1を握り、12月時点で国内1136店、海外188店を展開する、インドネシア最大のコーヒーチェーンを自称している。
現在ティルタナタは、高品質なインドネシア産コーヒーを求める顧客層が広がると見ており、2030年までに2億ドル(約314億円)を投じて、店舗数を3倍超の4000店に増やす計画だ。「我々は東南アジアで、店舗数だけでなく、売上高と収益性でも最も支配的な企業、ブランドになりたい」と彼は語る。
インド本社のレッドシア・ストラテジー・コンサルタンツのシンガポール拠点パートナー、ロシャン・ベヘラによれば、こうした構想は、急速に変化するこの地域のコーヒー市場の流れにも合致しているという。消費者は「質が低く、組織化されていない販売チャネル」を離れ、「品質が保証された、より洗練された体験」へ移行しているとベヘラはメールで述べた。その一方、プレミアムコーヒーを飲む層は、「高品質でありながら値段の張らない」選択肢を求めているという。
レッドシアは2025年4月のレポートで、カフェやレストラン、ホテルで提供されるコーヒーと小売店で販売されるコーヒーを含むインドネシアのコーヒー市場が、2024年の67億ドル(約1兆円)から2030年には126億ドル(約1.98兆円)へ拡大し、年平均成長率は11%になると試算した。レッドシアは、中間層の拡大と可処分所得の増加を背景に、家庭外でのコーヒー消費の割合が2024年の約50%から65〜70%まで高まると予測している。
その追い風をつかむため、Kopi Kenanganは急ピッチで出店を進めてきた。ここ1年で開いた店舗は347店で、ほぼ1日1店のペースだった。ティルタナタCEOによれば、同社はコロナ禍以降5年連続で赤字が続いていたが、2025年に黒字へ転換した。同年の売上高は前年比45%増の1億8400万ドル(約289億円)となり、純利益は1700万ドル(約27億円)だった。その勢いは続いており、2026年第1四半期の売上高は前年同期比70%増の5700万ドル(約89億円)に達したという。ティルタナタは、2030年までに年間売上高6億5000万ドル(約1021億円)を目指していると付け加えた。



