アニメーション制作にAIを活用
「Morning Again」のユニークネスは、その制作方法にもある。松山は、サイバーエージェントとの協業で、AIをつかったアニメーション制作に挑戦した。
「アーティストってコントロールフリークなところがあるので、やったことのない、見えないものはなかなか手を出したがらないんです。自分が全部描けるって思ってしまうから。でも、できないことにあえて踏み込んでみるから新しい表現が生まれるし、その方が面白いと思うんですよね」
本作では、サイバーエージェントの最新の生成AI技術を駆使し、幾度ものシミュレーションを重ねることで、静止画である原画から有機的な動きを生成。モーショングラフィックスを中心とした精密な映像技法を高度に融合した。
2023年にアーティスト・ゆずの25周年記念アリーナツアーに合わせて手書きの映像作品を制作した経験のある松山。当時はゆずの楽曲ありきでの制作だったが、今回はすべて松山がイニシアチブをとる作品制作となったため、アニメーションの制作現場でも活用されるようになってきたAIを入れてみようと考えた。
「制作自体はとても面白かったです。AIは思い通りに動いてくれないけれど、チームで議論を重ねながら形にしていく過程には大きな手応えがありました。あと、作画を担ってくれた人の職人技を否定しなくて良いという点では楽でした。僕自身もそのストレスを知っているので。時間や予算といったコスト面でもメリットがありました」
結果的には、アーティストにとってAIはどんな存在となりえると感じたのか――?松山は、「蓄積された情報の集約と編集には長けているが、知性の領域においては、まだ人間に委ねられる部分が大きい」と話す。
「過去作品の蓄積があってこそだった。まったく新しいものを描かせようとすると、ダークに描いてくれとって言っても、どこかチープな表現になってしまう。映像のストーリーやコンセプト設計に関しても、今回僕が考えた“タイムズスクエアのビルボードを一度真っ白にする”という発想は、AIからは出てこないと思うんです。“タイムズスクエアがどういう場所かを前提にコントラストを強めることはできても、そこから一度すべてをなくして真っ白にする、というような別の次元から切り込む発想はまだ難しい」

4月10日(ニューヨーク時間)には、アレックス・コンサーニやYouTuberのkemioなどニューヨーク在住のセレブリティや関係者たちを招いてタイムズスクエアで「Morning Again」の鑑賞イベントを開催。特別にスピーカーを設置して音楽に合わせた上映が行われ、1日の終わりに大きな歓声が上がった。
この日に限らず、連日タイムズスクエアの大階段を埋め尽くすほどの観客に感動を与えている本作は、4月30日まで毎晩上映される。


