「AIはウランとは異なる」——近著『PLURALITY』(サイボウズ式ブックス)で多様な人々が協働しながら技術を活用する未来を描いたオードリー・タン。
現在発売中のForbes JAPAN4月24日発売号は「THE LEADERSHIP AI時代のリーダーシップ」特集。時代の転換点において、求められるマインドセットとは?
本特集では、「AIで最も影響力のある100人」(米TIME誌)にも選ばれた彼女に、Forbes JAPANが独占インタビュー。AI時代のガバナンス、そしてリーダーシップについて聞いた。
——近年のAIの急速な社会への浸透について、どのような点が課題と感じるか。またその課題への対処法をいかに考えるか。
AIが急速に社会に広まっていることは皆が知るところですが、特にここ4、5年は特定の形——極めて中央集権的で、健全な人間関係よりもエンゲージメントの最大化を目的に最適化されています。主にスマホやSNS上のレコメンドエンジンなどですが、その性質は「寄生的」です。人間関係や睡眠時間、明晰な思考力といったものを引き換えに我々の注意を奪い取っていく。これらは巨大テック企業のテンプレートで、今やSNSだけでなくすべての領域に拡張されようとしています。これは技術だけではなく、ガバナンスの問題です。優れた言語モデル、コンピュータビジョン、音声認識、ますます高度化するロボット技術——これらはインフラですが、問題は「誰がこのインフラを操縦するのか」です。現在は、多くの分野における主導権はごく少数の巨大企業に集中しており、そのビジネスモデルはデータの抽出に依存しています。しかし、これは避けられない宿命ではありません。設計上の選択です。だからこそ、私が提唱する「テクノ・コミュニタリアニズム」(※SNS、チャット、個人アシスタントのような個人中心AIではなく、市民討議、集団意思決定、地域AIといったコミュニティを中心としたAIのこと)のような代替的な設計の選択肢を開発する必要があります。
私たちの親密な関係は、伝統的にコミュニティの中で維持されてきました。地域社会における人間関係や相互扶助、家庭内での責任分担などです。しかし人工的な親密さ(Synthetic Intimacy)に依存するようになると、そうしたコミュニティの絆はすべてグローバルなプラットフォーム、モノクロームな文化へと溶解してしまう。コミュニティはもはや関係性をもたず、データや成功の指標はコミュニティのはるか外のどこかで定義されるようになる。真のリスクは、人々がサンフランシスコや北京で設計されたシステムとの親密さを、友人、家族、近隣住民との関係よりも親密だと感じてしまうことです。
——コミュニティがAI実装をリードするといった場合、具体的に誰が主体で、どのように進めるのか。
もちろん、すべての人々です。例えば、アップルコンピュータにはアップルインテリジェンスという、メールの要約や画像編集、アプリ操作の補助などを行う小さなモデルが搭載されていますが、ユーザーの文脈に合わせてオンデバイス(端末内)で提供されており、インターネットすら不要です。それぞれの地域コミュニティは、このような形でモデルを取り入れることができます。



