——AIの進化スピードは、リーダー自身の学習スピードを超えつつある。リーダーが「知らないこと」と向き合うために必要なマインドセットは何だと考えるか? またあなた自身は今、何を学んでいるか?
私の意思決定プロセス、つまり「結果」だけではなく大臣として、現在はサイバー大使として行ってきた仕事の監査証跡全体がオンラインで閲覧できます(sayit.archive.tw)。データセットとしてHugging Face(※AIを扱うためのオープンソース・コミュニティ)にも公開されています。先ほどお話しした小さな言語モデルは私の発言記録に基づいて微調整することで、私がなぜそのような決定を下したのかを理解できるようになります。つまり、“私は世界から学んでおり、世界は私から学んでいる”と言えます。これは単なる機械学習や人間による学習ではなく、「協調学習」です。私たちはともに学んでいるのです。
意思決定プロセスを関係者全員に可視化することで、オープンソースが長年培ってきた利点、つまり「多くの人が見れば、バグは浅くなる」という効果が得られます。多くの人が私の推論の誤りを見つけて指摘してくれるので、私もそこから学ぶことができる。つまり、私一人で重荷を背負うのではなく、皆が協力して重荷を背負っているのです。
信頼はこのようにして築かれるのではないでしょうか。誰かが私の間違いを指摘すれば、私はすぐに修正できます。信頼は、間違いが全くないことによって築かれるのではなく、修正の速さによって築かれます。
2020年のコロナ禍でマスク配布システムを導入した際、オンラインでのマスク配布やマップには公平性の問題がありました。農村部では、マスクまでの距離は同じでも、移動により時間がかかりました。そこで、野党議員がオープンデータやオープンコードに着目し、より優れたアルゴリズムを開発しました。そして、私たちは再び3日間という日程に調整し直しました。信頼が高まったのは私たちが間違いを犯さなかったからでも、完璧なシステムを設計したからでもありません。反対派とのリアルタイムでのやり取りを通して、修正が迅速かつ目に見える形で行われたからです。
企業やリーダーたちは、AIが完璧だと約束してはいけません。AIは完璧ではないからです。しかし、迅速かつ目に見える修正は約束できます。顧客や従業員が実際に信頼するのは、まさにこの点です。


