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2026.04.27 14:30

NEC復活の全貌、株価100円未満から時価総額10倍へ導いたAIネイティブ戦略

小玉浩|日本電気(NEC)

小玉浩|日本電気(NEC)

『Forbes JAPAN』2026年6月号の第二特集は「AI時代の『組織変革』論」。AIツールが職場に浸透する今、問われるのは「AIを軸にした組織変革」だ。AIを使って経営の意思決定の質を高め、持続的な成長へとつなげることができるか。「AI役員」から「AIコレクティブセキュリティ」まで、5つのキーワードで日本企業の最前線に迫る。

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経営危機の状況下から、組織とビジネスの徹底したDX変革で再生を果たしたNEC。AIネイティブカンパニーを目指す同社のAX戦略と、イノベーションの要諦とは。


「こちらです」。社員に案内されながら日本電気(NEC)本社のフロアに足を踏み入れた瞬間、画面越しにほほ笑む同社CEO・森田隆之の姿に目を奪われた。森田の分身AIアバターだ。その左には、巨大スクリーンに経営関連情報がびっしりと映し出されていた。同社のデータドリブン経営の象徴のひとつ、「経営コックピット」である。経営陣から社員まで、同じファクトに向き合いながら日々の業務に取り組んでいるという。

最先端の技術を駆使しながら、社会とビジネスのイノベーションを手がけるNEC。同社は今、社内DXで整備したデータ基盤をベースにAIトランスフォーメーション(AX)を推進している。「AX Agenda」を設定し、AI前提のリソースシフトから倫理・ガバナンスセーフティまで、8つの観点でAIを用いた企業変革に取り組む。それらの成果はすべて社内イントラネットに掲載し、全従業員に展開している。いわば「全員参加型のAX」だ。「AIを浸透させるためには、AI前提で物事を再構築しなくてはいけない。我々が目指すのは『AIネイティブカンパニー』です」

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そう話すのは、執行役Corporate EVP兼CAXOの小玉浩だ。2010年代前半に業績悪化が顕著となり、株価が1株当たり100円を切るなか、18年にDXの責任者に就任しNECのビジネス変革と企業体質の改革を同時に推進してきた。まさに「DXによるNEC再生の立役者」である。

痛みを伴う企業変革のプロセスのなかで生まれたコンセプトに「クライアントゼロ」がある。NECが“ゼロ番目”の顧客となり、最先端技術を実証しながら生きたナレッジを習得し、顧客や社会に共有することでビジネスにつなげるというものだ。こうした取り組みも功を奏し、同社の時価総額はこの10年で最大10倍ほどにまで増加している。

だが、真の変革はこれからだ。「今ある業務をそのままAIに置き換えるだけでは、大きな価値創造には行き着かない」。テクノロジーの進化を前提に、組織や仕事のあり方を根本から問い直す。それにはまず、職種や役割ごとに業務プロセスや社員の行動を洗い出すことが不可欠だ。エンジニアからコーポレート部門、人事に至るまで、業務内容を洗い出す対象は全部門に及ぶ。

NECは24年度からジョブ型人材マネジメントを本格的に導入している。今後は「人のジョブ」と「AIのジョブ」を定義し、AIと共に新たな価値創造に取り組むことを想定している。場合によっては、既存の業務や組織を丸ごとAIエージェントに置き換えることも考えられるという。

「技術がすさまじい進化を見せるなか、徹底的にAIネイティブへと突き進んでいかないと(自社と社会の)未来はない。たとえ苦労があったとしても、より良い将来のためだとポジティブにとらえています」

とはいえ、変革の旅が長ければ長いほど、社員を動かし続けるのは難しい。そこで小玉が重視しているのが「Quick Win」(クイック・ウィン)だ。初期段階の成功実績を素早く積み上げ、可視化することで組織全体の変革機運を高め、さらなる意思決定とアクションの原動力につなげる。

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文=瀬戸久美子 写真=阿部高之

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