サイエンス

2026.04.24 18:00

離島の植物はなぜ「病気に強い」? 隔離環境のメリットとデメリット

日本の離島、波照間島の植生(stock.adobe.com)

日本の離島、波照間島の植生(stock.adobe.com)

本土(大陸)から遠く離れた熱帯の島に生える植物は、本土に近い島の植物よりも、病気にかかる頻度が低い。南シナ海にある21の島を調査した研究チームは、島が本土から離れるほど、植物の病気の発生率が低くなることを発見した。

その理由は明白だ──距離があれば、害虫や病原菌は近づけないからだ。だが、実はこれは、半分しか当たっていない。残り半分の理由は、もっと奇妙で興味深いものだ。つまり、これらの島では、隔離状態によって、優勢な植物の種類が静かに変化し、その変化によって、病気のリスクを再び押し上げているのだ。全体的に言えば、植物はより健康ではあるが、その理由には、相反する2つの要因が関わっている。

学術誌『Ecology Letters』に2026年3月に掲載された研究論文でこうした知見を報告したのは、中国の海南大学に所属するHao Qin(ハオ・チン)や、蘭州大学の研究者たちだ。これらの島々は、中国・海南島から南へ300km以上離れた外洋に点在しており、街区一つほどの大きさの島から、約400ヘクタール規模の島まで含まれている。

研究チームは、島々に89カ所の調査区を設定し、361種の樹木や低木を記録した。各種について、葉を採集し、目に見える異常の兆候がないかを調査した。具体的には、真菌や細菌、ウイルスといった病気による変色、壊死、凋萎(ちょうい:しおれること)、奇形。昆虫の摂食による組織の損失(かじり跡、穿孔、虫コブ)だ。顕微鏡下で感染を確認し、被害の深刻度を6段階で評価した。

島のサイズよりも島の距離が重要

島嶼生態学の基礎となる理論、いわゆる島嶼生物・地理学理論は、1960年代にロバート・マッカーサーとE.O.ウィルソンによって提唱された。この理論は、島嶼の生物多様性について2つの予測を立てている。

まずは、島が大きいほど、そこに生息する種は増える。なぜなら、定着と絶滅のバランスにおいて、小さな島よりも大きな島の方が、種が生き残る可能性が高いからだ。次に、孤立した島ほど、生物がそこへ到達するのが困難になるので、種の数は少なくなる。

実際のところ、島の大きさは、ほぼ常に決定要因となる。数々の研究によって、生息域の広さと、種の豊富さとのあいだには強い相関関係があることがわかっている。距離も重要な要素ではあるが、その影響は比較的弱い傾向にある。

しかし、今回の研究はその説を覆している。植物の病気や、草食動物による食害に関して言えば、島の大きさは、群落レベルにおいて直接的・間接的な影響を一切及ぼさなかった。より大きな島は、生息地がより広く、宿主(寄生虫や菌類等が寄生・共生する生物)が多く、食物網もより複雑であるにもかかわらず、植物の病気の発生率は高くなかった。

対照的に、本土からの距離がすべてを左右していた。これは、唯一の重要な地理的要因であり、相反する方向へと作用する2つの異なる側面を持っていた。

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翻訳=藤原聡美/ガリレオ

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