北米

2026.04.22 16:00

中東情勢に揺れる米国経済のリアル 「エネルギー自立」の限界、理論上の自給率100%でも

米カリフォルニア州ロサンゼルスのガソリンスタンドに掲示されたガソリン価格。2026年3月3日撮影(Mario Tama/Getty Images)

米カリフォルニア州ロサンゼルスのガソリンスタンドに掲示されたガソリン価格。2026年3月3日撮影(Mario Tama/Getty Images)

3月9日のアジア取引時間中に1バレル=119.54ドルまで高騰した原油価格は、イランがレバノンでの停戦を受けて今月17日にホルムズ海峡の開放を発表すると89.88ドルまで急落した。中東紛争の先行きはいまだ不透明で誰にも予測はつかないが、情勢の変化に応じて原油価格が乱高下を続けるのは間違いない。

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ドナルド・トランプ米大統領にしてみれば、米政権は不誠実で決然とした狂信的なイスラム革命防衛隊との戦いにおいて、降りかかる困難を巧みにかわし続けているつもりかもしれない。しかし、その動きは多くの観測筋にとってはむしろ、エネルギー価格の高騰に伴う経済的・政治的反発への恐れと、イランの核開発に向けた野心を完全に断ち切る必要性との間で、右往左往しているように見える。

JPモルガン・プライベートバンクによれば、米国は数年前に「エネルギー自立」を達成しており、理論上は国内生産のみでの自給自足が可能だ。実際、1973年のアラブ産油国による石油輸出禁止に起因する第1次石油危機や1979年の第2次石油危機の際とは異なり、今回はガソリンが配給制になることも、ガソリンスタンドに長蛇の列ができることもない。

しかし、ガソリンの小売価格は値上がりしており、政治家や経済学者たちは遠く離れたインド洋とホルムズ海峡を結ぶ重要な要衝の命運を固唾を呑んで見守っている。米国のエネルギー自立には限界があり、原油価格にも投資にも貿易の流れにも、世界の動きが影響する現代において、その限界に知らぬふりをしても無駄である。

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ガソリンスタンドに及ぶイラン攻撃の影響

不都合な真実がある。米国内で生産された原油でも、価格は世界基準で決まる。

米国は2025年、過去最高となる日量1360万バレルの原油を生産し、これは世界供給量の約22%を占めた。これらの数字は緩衝材になりそうに思えるかもしれないが、実際には原油価格は世界市場で決定される。米ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)とロンドンのICE(インターコンチネンタル取引所)フューチャーズヨーロッパが2大取引プラットフォームであり、それぞれWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)原油先物とブレント原油先物が世界の原油価格の指標となっている。これらの金融センターの他に、シンガポールがアジアにおける物流・交易の集約拠点となっており、その戦略的立地ゆえに世界の石油貿易と石油製品の3分の1を扱っている。インフラへの攻撃や航路の封鎖といった混乱が、世界中の原油の指標価格に影響を及ぼすことははっきりしている。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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