「エネルギー自立」とは何か
米国における「エネルギー自立」の概念は、米国が輸入するエネルギーの総量よりも多くのエネルギーを輸出することを意味する。しかし、米国は孤立して機能しているわけではない。米国内の石油消費が日量約2000万バレルに上る一方で、生産量は日量1300万バレル程度にとどまっている。不足分の700万バレルは輸入で補われ、特に重質原油が多くを占める。これにはベネズエラ産が含まれ、メキシコ湾岸に製油所が集まっている。同時に、米国は軽質原油を大量に世界市場へ輸出している。この双方向貿易は効率を重視したものであり、自給自足が目的ではない。
天然ガスも同様の状況だ。米国は世界的な天然ガス産出国で、メキシコへ輸出したり、液化天然ガス(LNG)として海外へ大量輸出したりしているにもかかわらず、生産地の地理的制約から、米北東部への供給分はカナダから輸入している。この仕組みの背景には、LNGの液化・輸出ターミナルにガス田から供給パイプラインを引く必要があるというインフラの制約や、地域ごとの需要差がある。
消費者にとってみれば、エネルギー価格の上昇は増税のようなものだ。消費や生産、物流を鈍化させ、ひいては経済成長を阻害する。また、インフレを助長し、世界経済を弱体化させる。
投資家はこうしたサイクルを注視している。供給ショック時にはエネルギー関連株がしばしば好調となる一方、航空、海運、製造業など燃料コストに敏感な業界は逆風に直面する。
世界の動向に遅れを取る米エネルギー政策
石油危機に政策面で対処する手段は限られている。国際エネルギー機関(IEA)主導で最近行われた戦略的石油備蓄の放出のような協調的取り組みは、一時的な価格安定をもたらすが、大規模な供給危機が収まらない限り、長期的な解決策とはならない。トランプ政権はまた、政治的な便宜ではなく将来の地政学的緊急事態に備えて、価格がさらに下落した際に備蓄を補充すべき時期を決定する必要がある。
今回の石油危機において米政府が取れる追加的な政策措置としては、低所得者層を対象とした消費者保護、製油所やパイプラインなどのインフラの認可拡大、そして採算性のある代替エネルギー発電設備、すなわち石油依存と排出量を全体的に削減できるグリーンエネルギーと原子力エネルギーなどの導入加速などが考えられる。
幸いなことに、米国はかつてないほど大量の石油とガスを生産している。だが、炭化水素が世界的に取引される商品である限り、1ガロンのガソリンにも地政学的リスクは内在し続ける。エネルギー価格の乱高下は、当面の間続くだろう。


