北米

2026.04.22 16:00

中東情勢に揺れる米国経済のリアル 「エネルギー自立」の限界、理論上の自給率100%でも

米カリフォルニア州ロサンゼルスのガソリンスタンドに掲示されたガソリン価格。2026年3月3日撮影(Mario Tama/Getty Images)

WTIとはすなわち米国産原油のことであり、その値動きは同じく世界標準であるブレント原油と密接に連動している。ペルシャ湾での紛争によって石油供給が脅かされると、ブレント価格は上昇し、WTIも追随する。原油価格が上昇すれば、すぐにガソリン価格も上がる。

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この10年間で米国はエネルギー生産の国際舞台に力強く復帰し、世界最大の産油国となった。2015年に米国は原油輸出禁止措置を解除し、国内の生産者に世界市場への自由参入を容認した。この政策転換により、米国は原油生産とエネルギー備蓄を幅広い経済成長につなげ、それを外交政策の手段として有効活用できるようになった。それから10年を経た今、エネルギー輸出は米国の国際的な政策手段の中で重要な位置を占めており、その規模は月間約270億ドル(約4兆3000億円)に達している。

ただ、規制の撤廃により、かつて米国の石油価格を世界的なショックの直撃から守っていた緩衝材はなくなった。今や米国産の石油が海外へと流れる一方で、世界の価格変動は米国内に流入している。たとえテキサス州で採掘された石油でも、その価格はテヘランのリスクを反映するのだ。

石油危機の打撃、最も深刻なのはアフリカとアジア

石油価格は買い手を選ばない。豊かな先進国であろうと苦境にある発展途上国であろうと、価格は同じだ。米国の消費者は、高額な燃料税が課される欧州よりもかなり安いガソリン価格の恩恵を受けているが、それでも給油や食品価格、インフレ急騰などの形でエネルギー価格高騰の痛手を感じている。だからこそ、原油価格の上昇は日常的な経済活動に影響し、投票行動にも波及するのである。戦争が政治化の度合いを強めている今はなおさらだ。とはいえ、米国の消費者は最も厳しい状況に置かれているわけではない。世界市場における石油危機の影響は不均等である。

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今後、最も深刻な打撃を受けるのは、サハラ以南のアフリカで苦境にあえぐ国々だろう。原油価格の変動は、農業の機械化をめざして苦闘を続ける各国の経済にとりわけ深刻な影響を及ぼすに違いない。これらの国々では石油消費量が比較的少なく、豊富な備蓄があったからこそ、これまで大惨事は回避されてきた。

また、アジア各国は石油消費量が多く備蓄が少ないため、今回の供給混乱でたちまち大きなダメージが広がっている。より深刻なのはホルムズ海峡を経由する石油輸送への依存度で、日本は輸入原油の95%、韓国は70%をそれぞれ湾岸地域に頼っており、極めて高いリスクにさらされている。価格上昇はこの脆弱性を反映している。大規模な戦略石油備蓄を持たないカンボジア、ベトナム、パキスタンでは、米国よりもはるかに急激な燃料コストの高騰が起こっている。この事態は巨大なアジアの製造セクターを圧迫し、その影響は世界に及ぶだろう。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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