台湾の電子機器メーカー、チェンブロ・マイコン(勤誠興業)の2025年売上高が、前年比52%増の約1100億円に達した。純利益は84%増の約180億円だ。
人工知能(AI)サーバー向けの筐体(シャーシ)需要が爆発的に伸びたことが背景にある。米国向けが売上高の半分以上を占め、AWS・マイクロソフト・オラクルといったハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)に製品を供給している。
同社の株価は過去1年で約3倍に上昇し、時価総額は約5450億円に達した。率いるのは、1983年に夫レオンなどと同社を共同創業した会長のマギー・チェン(70)である。台湾では「シャーシの女王」とも呼ばれ、2024年にはフォーブスアジアの「パワー・ビジネスウーマン」に選ばれた。AIインフラ投資ブームが続く中、チェンブロはテキサス州とマレーシアでの新工場建設も進めている。
ただし、AWSへの依存度の高さや、AIインフラへの過剰投資懸念といったリスクも指摘されている。本稿では、フロッピーディスク用ツールから出発したチェンブロの歩みと、創業から30年社長を務めたマギー・チェンの経営哲学に迫る。
PCシャーシから出発し、サーバー向け大型シャーシへ事業の軸足を移す
1990年代半ば、マギー・チェンはチェンブロが製造するPC向けシャーシ(ケース)の販売を伸ばすために、「Intel inside, Chenbro outside」というスローガンを打ち出した。これは、米半導体大手インテルのキャッチフレーズに、当時まだ知名度の低かった台湾本拠の自社名を組み合わせたブランド戦略だったが、さほどの効果を上げられなかった。競合の参入が相次ぎ、利益率が圧迫される中で、チェンはコンピューターサーバー向けのより大型のシャーシを手がける方針に転じた。
製品群を広げたチェンブロは2000年代初頭になると、数百種類に及ぶ製品群と顧客ごとのカスタマイズ対応を手がけるようになり、新たなスローガンを「Whatever’s inside, Chenbro outside」に刷新した。今ではテック大手各社がAI、クラウド、5G向けのデータセンター建設を急いでいる。こうした施設には通常、数千台のサーバーが並ぶ。その結果、チェンブロのシャーシや関連部品の需要は急拡大しており、同社は海外展開と研究開発への投資を強めている。
新北市のチェンブロ本社からビデオインタビューに応じたチェンによると、同社は現在、米国や東南アジアのデータセンター集積地により近い場所へと拠点を移すとともに、機動力を保つための技術革新を迫られている。「当社は、高性能な材料や機械、先端的な製造技術へとシフトしていく必要がある」とチェンは強調した。



